心を全部奪って



「あっ、すみません」


道行く人と肩がぶつかってしまって、俺はペコリ頭を下げた。


それでも、どうしても走る足が止められない。


5日も朝倉の顔を見ていない。


こんなに会ってないのは初めてだから、


俺は会社までの道のりを走っていた。


早く。


少しでも早く会いたくて…。


お土産だって買ってあるんだ。


ひとつは部署のみんなに。


ひとつは朝倉に…。


仕事の合間に口に入れられそうな、綺麗な色の飴。


机の引き出しに、そっと忍ばせておいて欲しいんだ。


冷房が直接当たる席で、いつも寒そうにしていて。


いつ風邪を引くかと、ヒヤヒヤしてしまうから。


喉を痛めないようにと。


そう思って、選んだんだ。