心を全部奪って

「ごめんなさい…」


私の言葉に、霧島君は大きくハッと息を吐いた。


「ごめんって何?

俺に連絡できなかったこと?

アイツに抱かれたこと?」


「霧島君」


「それとも…」


それとも?


それとも、何…?


「俺とは付き合えないって、

そういうこと…?」


「あの…」


「クソッ!」


霧島君はそう言って、窓をグーでダンッと叩いた。


その音に、ビクッと肩が揺れた。


「アイツ…、朝倉に本気だったんだな…。

奥さんと別れてまで…、お前と一緒になりたいなんて…」


実は私もビックリしていた。


工藤さんが、そこまで考えてくれていたなんて。


「そこまでされたら…、そりゃ戻るよな…。

だってまだ、朝倉はアイツのことが好きなんだもんな…。

でも…」


霧島君が一歩、二歩と私に近づいて来る。


そして、私の目の前でピタリと止まった。


ゆっくり右手が伸びて来たかと思ったら。


その手がそっと私の頬を包み込んだ。