心を全部奪って

「もう、俺の方のサインは書いてある。

あとは妻のサインをもらうだけだ」


「で、でも…」


本当にそれでいいの…?


後悔、しないの…?


「奥さんが、承知する…?」


そうだよ。


奥さんが承知するはずない…。


イヤだって泣き崩れる姿が、目に浮かぶようだよ。


そう考える私とは違って、工藤さんはいたって冷静な顔をしていた。


「妻はね、うすうす気づいているよ。

俺に、女性の影があることに…」


「え…?」


「だけど、何も聞いて来ない。

知らないフリをして、普段通りに生活してるよ。

俺達は、もうずっとそんな感じ。

お互いに関心がないんだ…」


「工藤さん…」