心を全部奪って

「軽蔑なんかしないよ。

ただ…、

すげー悔しいって思う」


「悔しい?」


「あんた、すげー綺麗なのに…」


「え…?」


やだ。


霧島さん、何言って…。


「ホント、もったいないなって思う…」


そう言って霧島さんが、遠くの夜景を見つめた。


それにつられて、私も同じように夜景を見つめた。


「確か去年の8月だったよな?

あんたが今の会社に入ったのって…」


「そ、うですね。

8月でした。

霧島さん、知ってたんですね」


「うん…。

知ってたよ。

だって、食堂で見たんだから。

あんたが入社して来た日に…」


「え…?」


私が入社した日?


「俺、あんたが一緒にメシ食ってた人事部の課長に、トイレで会った時に聞いたんだ。

今日一緒に食堂にいた女の人は誰ですかって。

だから、もうとっくに名前だって知ってたんだ…」


うそ…。


霧島さんは、そんなに前から私の事を知っていたの…?