さくらちる。


もともと人見知りをする性格なため誰にも声をかけることが出来ずに、一人で帰宅する


朝息を切らしてのぼった階段をゆっくりおりて、下駄箱までいく


御垣高校は自宅からすこし離れたところにあるため電車にのらなければならない


さらにこの高校は駅から離れたところにあり、20分も歩かなければならないことを今日の朝初めて知った


本来入学式は保護者とくるものであるため、電車で来る人は少ない


しかし両親ともに働いている私は入学式などに参列することが出来ずこうやってひとり電車でくるしかないのだ


肌寒いなか、新品の制服越しに自分を抱きしめながら駅に向かって歩き出す


歩き始めて10分、ちょうど学校と駅の真ん中にある交差点で信号まちをしていたとき隣に車がすごい近さで止まった


驚いて振り返ってみると、そこには見知った顔があった


『奈美ちゃん!奈美ちゃんじゃない!』


「あ、こんにちは、ゆきさん」


私に車の窓ガラスをあげて話しかけてきたのは金橋 高槻の母親、通称ゆきさんだ


『こんにちは、奈美ちゃんもこの高校なの?』


ゆきさんは私の制服をちらりと見てそう言った


「はい、実はそうなんです」


するとなぜか嬉しそうに笑った

しかしすぐにしかめっ面になってしまった


『そうなの!じゃあうちの子と一緒ね!
あら!また美紀ちゃんはお仕事?』


美紀ちゃんとは私の母のことである


「ええ、まあ」

『もう!相変わらず仕事一筋なんだから!』


頬を膨らまして怒っている


普通の人がやると痛い大人だが、似合ってしまうゆきさんはすごい


『奈美ちゃん車にのって?送ってくわ』


「え、そんなとんでもない!」


『いいわよ、どうせ隣なんだから』


それでも渋っていると、


『つべこべ言わず早く乗れよ』


と後部座席から聞こえてきた


『こら!たか、そんなこと言わないの!』



こんなことを言ってくるのは金橋高槻しかいない


『ごめんね、奈美ちゃん。いいわよお礼は美紀ちゃんにしてもらうから。ね?』


そこまで言われて断るわけにもいかず、おとなしく車に乗り込んだ


金橋高槻は乗り込むときにいやそうな顔をこちらにむけてきた