「もちろん彼のせいでも誰のせいでもない。でもそれから蒼太は外で遊ぶのをやめてしまった。口数も減ってしまってね、痛々しかった」
 熊蔵は長いため息をついた。
 何か思案しているような表情で暫く黙っていたが、再び紅葉の方へ視線を戻す。
「緑が大きくなるに連れてだんだん元気が戻ってきた様にも見えました。実際、母親がわりと言っていいほど良く世話をしてくれた」
 熊蔵の話を聞いて、紅葉は今までの疑問に答えがでたような気がした。

 料理が上手な蒼太。
 時々、自分を子供扱いするような仕草。
 お母さんみたいだと。
 冗談で言ったこともある。
 あのとき蒼太はどんな風に思っただろう――

「でもね、紅葉さん」
 熊蔵に呼び掛けられて、紅葉は顔をあげた。