「律ちゃんはどう思う?」
 ひととおり話して、おそるおそる訊いてみる。
「そうね……今時珍しいくらい良い人だよね。蒼太くんだっけ? アキラに爪の垢でも飲ませてやりたいところだわ」
「いや、そーじゃなくてさ」
「あはは。ごめん冗談」
 律子はけらけら笑いながら、そう言って一息つくと、逆に紅葉へ尋ねてきた。
「紅葉の気持ちは、どうなの?」
 鋭いところを突かれて、思わず言葉につまってしまう。
「うん……それがわかんなくて悩んでる」
「ふーん?」
 律子が電話の向こうでクスリと笑った。
「律ちゃん?」
「あ、ごめん。でもさ、紅葉がそんなに悩んでるの珍しいじゃない?」
 咎めるような紅葉の声に素直に謝罪し、笑うのをやめて律子は続けて
「ホントにいい人なんだね」
 今度は真面目に、そう言った。
「……うん」
 紅葉は素直に頷く。律子と話すと昔から不思議と素直な気持ちになってしまう。
「だからね、悩んでる。あたし……このまま、ここにいてもいいのかな?」
「そうねぇー……」
 しばらくの間を置いて
「いいんじゃない?」