唐突に電話をかけてきたかと思えば、勝手に話を終わらせて切ってしまうわ、何を考えたか会いにくるつもりらしい。
 あの幼馴染がそういうからには本当に来るつもりだろう。
 昔から、そんなノリの男だ。思いついたことを特に何も考えずそのまま実行に移す奴なのだ。ゆえに周りからは落ち着きがないとよく言われていたのを思い出す。
 しばらく頭を抱えてぼーっとしていた紅葉だったが、投げ出していた携帯を再び手にとり、メールを打つ為に画面を開いた。
 相手は律子。気丈な彼女だが、別居なんて聞くとさすがに心配になってしまう。
 返事はすぐに電話で帰ってきた。
「どうしたの? メールも久し振りじゃない。なにか、あった?」
「なにかあった? じゃないよ。別居中ってホント?」
「あー。アキラね……」
 電話の向こうでため息が聞こえる。
「気にしないで。あの馬鹿。紅葉に心配かけてどうすんのよ」
「や、あたしはいいんだけど」
 声が元気そうなので、紅葉はほっとした。そうだった、これくらいでへこむような律子ではない。
「それより紅葉は元気なの? 最近電話もあんまりしないし。心配してたんだよ」
「元気だよ。ごめん、律ちゃん忙しそうだし……今日は仕事は?」
「夜勤明けで休みなの。よかった声聞けて。ねぇ本当に元気? どこにいるの?」
 あいもかわらず自分より人の心配ばかりしている律子。
 紅葉の顔に自然と笑みがうかぶ。
「今ね……」
 ほっとしたついでに紅葉は律子にも、今までの事と蒼太の事を話すことにした。そう、何も友達はあの女たらしの男だけではない。紅葉にはもっと頼れる友人がいる。