夜と紅と蒼と……


 更に、それに追い討ちをかけるように。
「紅葉さん……ずっと無理してたんじゃありませんか ?」
「え?」
「さっきの涙の理由」
 唐突に放たれた蒼太の言葉に紅葉は一瞬、言葉を失った。
「紅葉さん、よく笑うけど、なんだか寂しそうに見えるんです」

 ――ドキリとした。

 家を出て以来感じていた心の奥のざわざわの正体。

 ――孤独。

 そう、それは孤独。わかってはいた。
 薄々、自分でも気が付いていた。
 だけど、そんなものは自分とは無縁だと思い込もうとしていた。
 人とは違う自分。受け入れてもらえない自分。そんなもの気にしてたらきりがない。
 ひとりでもいいじゃないか。自分は強いんだから…………そう、思ってたのに
 蒼太と緑は、いとも簡単に自分を受け入れてしまった。

 ――楽しかった。

 そう、楽しかった。
 だから、気付いてしまったのだ。

 ――人恋しい。

 誰かと一緒にいたい。
 ひとりは嫌だ。

「だから、なんとかしてあげたくなるんですよね。僕じゃ不足かもしれませんけど……」
 蒼太の言葉が、表情が、馬鹿みたいに優しいから……余計に、胸が苦しくなる。
 ずっと知らないふりしてたのに。隠していたつもりなのに。
 なんで、まだ会ったばかりの蒼太がそれを知っているのだろう。
 なんで……