――思えば、子供の頃は、昼間も外に出ることが多かった。
学校も普通の公立の小学校に中学校と通っていたし、学校から帰れば友達と遊びに出かけたりもしていた。
もちろん母親が細心の注意を払って、紫外線対策をしたうえでだ。
『いつから出なくなったっけ』
いつからか、外に出るのが億劫になっていた。
夏だろうと長袖姿。
おなじ年頃の女の子たちが着ている可愛い洋服も、昼間着て歩くことはできない。
日焼け止めは常に塗らなくてはならないし、その作業はとても面倒で……気がつくと外に出なくなっていた。
『十年ぶりくらいかなぁ』
久しぶりの昼はどんな顔を見せてくれるだろうか。紅葉は少しワクワクしながら奥の寝室へ入り、準備にとりかかる。
薄手の長袖のタートルネックにジーンズ。
つばの長めの野球帽。
サングラスに白い綿の手袋。
とにかく肌の露出面を極力なくしていく。
数分ほどして紅葉は、かなりの重装備で居間へ姿を現した。
「本当に大丈夫なんですか?」
「だいじょ~ぶ。全身日焼け止めクリームで完全武装したし」
心配顔の蒼太に紅葉は小さくピースサインをして見せた。
「不審者ってこんな感じだよな~」
緑がけらけらと笑う。
「こら……もとはといえばお前が無理言うからだろ?」
蒼太が軽く緑をこづく。
「うっ……ごめん」
しまったという顔をして緑は素直に謝った。
「……大丈夫?」
「へーき。あたしもたまには昼間の公園に行ってみたかったんだ」
おずおずと紅葉の顔を伺う緑を安心させようと余裕な表情を作って答える。
緑はホッとした表情をして早速玄関へ向かって靴をはきだした。
「すみません……」
「なんであやまんの? あたしも行きたいんだからさ。さ、行こ!!」
申し訳なさそうな顔してる蒼太の手をひいて紅葉も緑に続く。
本当の気持ちだった――
昼間出歩くのは確かに面倒だし大変だったが、緑と蒼太と、普通の人のように一緒に出かけてみたい……ただ、そう思ったのだ。

