眠っている彼女をおこさないよう、蒼太は体を起こして、毛布を紅葉にかけなおす。
 時計を見ると、もう昼過ぎだ。
 ずいぶん遅くに眠ったし、昨夜は残業で疲れもあったせいか、少し寝過ぎた。
 まあ、休みだから別に構わないのだが……
 そっと立ち上がり、空の布団がひかれてある寝室へむかい布団を片付けると、蒼太はテーブルの上にノートパソコンを広げ、起動スイッチを押した。
 立ち上がり、青く発光する画面をみながら昨夜の記憶をたどる。
 昨日、公園からアパートへ向かい歩きながら、彼女が何故あの公園へ来たのか、いきさつを聞いた。

「紅葉さんって、たくましいんですねえ」
「こんなナリで産まれたからねぇ。多少はたくましくないとやってけないんだよ」

 紅葉さんはそう言った笑ってたけれど、彼女がその容姿の為に人一倍つらい思いをしてきただろう事は容易に想像がついた。
 彼女はとても綺麗だし、華奢な外見とはうらはらに、なかなかたくましいのも何と無くわかったけれども……
 人というのは元来見慣れないモノや自分とは違うモノに恐怖心や警戒心を抱く生き物だ。
 普通に受け入れてもらうのは、彼女にとってはなかなか大変だろうし、傷付くことも多いだろう……
 そう思うと、何故だかとても切ない気持ちになった。
『僕の勝手な思い込みかもしれないけど……』
 胸のうち、ひとり呟きながらカチ、とクリックする。