『ヨルノウタ』


 夜が好き。
 暗いけどすいこまれそうな、深い蒼の世界。

 夜が好き。
 冴えた月のような白と透けるような紅がとても綺麗で……
 わけもなく胸がしめつけられる


 君が行き先が見えぬというならば。
 闇に落ちるのがこわいというならば。
 僕はほんの少しだけど灯りをともそう。

 泣き顔を見られるのが嫌だというならば。
 まだ少しだけ闇に紛れていたいというならば。
 僕は雲の影に身を隠し、静かに息を潜めていよう。

 美しく優しき魂を持つ人よ。
 どうか嘆かないで。

 貴方がのぞむだけ。
 その掌に。
 ひそやかに淡い雫を落としましょう。

 夜が好き。
 あなたといられるのなら……

 ぼくはどこまでも夜を歩こう。













【夜と紅と蒼と……~完~】