「幸せになりましょう、紅葉さん」
「うん」
 蒼太の胸に頭をもたれさせ、嗚咽交じりの声で紅葉は答える。
 自分達が、どれだけ大きな愛情に包まれていたのか、二人は痛切に感じていた……

 ――ひとりでも大丈夫

 ずっと、そう思ってきた。
 けれど、お互いに満たされる相手に出会い……そうではないと思い知らされた。
 そして今。
 自分達は、ずっとひとりではなかったのだと……改めて気付かされた。
 溢れんばかりの愛情に見守られていたのだ。ずっと、ずっと。気がつかないままに。

 そして今、ここにいる……
 こうして、二人でいる。

 人は誰もひとりきりではないのだと――

「ずっと、一緒にいましょう」
「うん」
 静まりかえった夜に包まれ。
 二人抱き合う。

 夜空に浮かぶ月は、ただただ優しく光をなげかけ……
 一つに溶けた二人の影を、そっと床に落とした――