だから、ずっと一緒にいるとは言ったものの、紅葉は蒼太の口からそんな言葉がでるなんて思いもしていなかったのだ。
「そんなの何の問題もないですよ」
 蒼太はさらりとそう言った。
「どうしてそんな心配を? たとえ生まれてくる子供がどんな子だろうと、かわいいにきまってるでしょう?」
 心底不思議そうな顔をして紅葉を見つめている。
「紅葉さんの子供。僕は欲しいですよ」

 いつもの微笑――

 紅葉はたまらず蒼太に抱きついた。
「変なやつ!!」
 不安感はどこかへ行ってしまった。
 自分が今まで悩んでたことが、馬鹿みたいに思えた。
 大丈夫。蒼太なら大丈夫。
「よく、言われます」
 いつもの口調でそう言って笑う声が耳元で優しく響いた。
「僕でいいですか?」
 抱きついた紅葉を受け止め、肩をそっと抱き寄せ、蒼太が訊く――
「いいに決まってる。蒼太がいい」
 紅葉は蒼太の背中を強く抱きしめた。