夜と紅と蒼と……


「そうだ、渡したいものがあったんです」
 蒼太がふと、思い立ったように立ち上がり、寝室のほうへ行き、たんすの引き出しから何かを出してきた。
「紅葉さんが行ってしまってすぐに、用意したんです。帰ってきたら渡そうと思って」
 差し出された手のひらには綺麗にラッピングされた小さな箱。
 素直に受け取り、丁寧にリボンをほどき、包み紙をあけると、中には紅いベルベットで覆われた小さな箱がもう一つ。
「あんまり、たいしたものではないんですが」
 苦笑しながら言う蒼太に促されるまま、箱をあける。
「これ……」
 中に収められていたものを見て、紅葉は言葉をつまらせた。
 紅葉の瞳に良く似た、小さな紅いルビーがはめ込まれた銀の指輪。
「今はコレくらいしか出来ないんですけど。紅葉さんと離れて改めて思いました」
 じっと、指輪を見つめて声もだせないでいる紅葉に蒼太の声が優しく降りてきた。






「僕には紅葉さんが必要だ。結婚してもらえませんか?」