夜は、深い蒼い闇に優しい光をたたえて、静かに公園を見下ろしていた。


 ベンチに腰掛けた蒼太は、二本目のビールの缶を開ける。
 空を見上げると、月にうっすらと雲がかかり、ぼんやりとしたやわらかい光が幻想的だ。
 夜の空はとても表情豐かで、見ていて飽きない。
 その静けさと美しさに呑まれそうになる。
 誰もいない公園。
 夜独特の静寂に包まれ、蒼太は、まだ戻らぬ最愛の人を想う。

 彼女は今どうしているだろう。
 同じように、この夜空を見ているだろうか。

 夜に支配された空を見上げ、押し寄せる思いの波に身をゆだねる。
 自分も夜に溶け込むかのような感覚――










「いいなーうまそーだねー」
 誰もいないと思ってたのに、不意に後ろから声をかけられ、蒼太はおそるおそる振り向く……。
 振り向いた瞬間、驚いて目を見開いた。

 夜の闇に月明かりを浴びて浮かぶ白い姿。
 そして印象的な紅い瞳。
 ずっと待ちわびた、愛しい人。

 彼女が、そこにいた――