よく晴れた夜空。


 病院から戻り、父と夕食をとった後。
 二階の自室へ戻った紅葉は、ベッドに腰掛け、窓から見える夜空をぼんやりと眺めていた。
 手には小さなメモ用紙――
 今日、病院へ行くと、アキラが来ていた。差し出されたメモには、きれいな字で書かれた電話番号。
「蒼太くんのだよ。落ち着いたら連絡くれってさ」
 律子は言ったとおり、アキラを蒼太のところに行かせてくれたのだ。
「ありがと。ごめんね」
 アキラに礼を言って受け取ったものの、すぐにかけることはできなかった。
『蒼太……』
 母の容態は随分落ち着いたとはいえ、一ヵ月は入院しなくてはならないだろうと、医師に告げられていた。
 父のほうも、折れたのが利き腕ではないとはいえ、片手が使えない状態で、家のことや母の世話をするのは当分無理だろう。