夜と紅と蒼と……



 翌日、昼近くまで寝過ごしたあと、アキラは帰って行った。
 入れ替わるかのように緑が遊びに来たのだが、紅葉がいないことがわかると、何故いないのかしきりに聞きたがる。。
 両親の事故のことが、緑には言いづらく、ごまかすのに苦労した。
「ちょっと用事ができて、家に帰ってるんだ。大丈夫、また戻ってきてくれるよ」
 そんな、曖昧な言葉しか言ってやれない。
「本当に? ねーちゃん帰ってくる?」
 不安気に聞く、緑の顔を見ていると、本当に紅葉が戻ってくるのか、蒼太自身、漠然とした不安感に襲われた。
「大丈夫」
 緑に言いながら、自分にも言い聞かせる。

 ――大丈夫

 自分が彼女を信じなくてどうする。
 今、一番つらいのは紅葉ではないか。
 信じて待てなくてどうする。
 何度も、心のなか、繰り返す。





 夕方、緑を駅まで送った後、昨夜行きそびれた公園へ行った。
 雲は晴れて、星の瞬く夜空はとてもきれいだったのだけれど。
 なんだか色あせて見えて……
 その日は早めに部屋へと戻った。