二階建てのごく普通のアパート。
 二階の1番奥の部屋の表札には『柏木』と書いてある。

 公園であるだけのビールを飲み終えた後、そのまままっすぐ歩いてやってきた蒼太の部屋。
 アパートは外から見ると結構古い建物だったが、蒼太に案内され通された室内は、一度リフォームでもしたのか割と綺麗だ。
 玄関を入るとすぐ小さな台所になっていて、両側にそれぞれ、トイレと風呂場のドアらしきものがある。
 その奥が居間らしく、六畳ほどの和室に小さなテーブルとテレビがあり、男の一人暮らしの部屋にしては、さっぱりと片付いていた。
 部屋を見回す紅葉をよそに、蒼太はさらにその奥の和室に行き布団をひいて戻ってくると、そこで休むように紅葉に言って、自分は毛布一枚持って居間に引き返していった。
 精一杯の心遣いなんだろうなと思いつつ、部屋に大きな窓があるのに気付き、紅葉は少し困った。
 アルビノ(正確にいうと先天性白皮症)は紫外線に弱い。部屋のなかとはいえ窓際は要注意である……

 しばらく思案した後。
 紅葉がフスマを開けて居間を覗くと、蒼太は畳の上で毛布にくるまりすでに寝息をたてていた。
 ちょっといたずら心が芽生えて、そっと近づいて肩先をつついてみるものの反応はない。すっかり熟睡してるようだ。
 身体に巻きつけるようにしてあった毛布のすそをひっぱりだす間も、寝返りひとつうたないのを確認しながらすそを広げていく。
 ほどなくして綺麗に広げられ、元の四角状になった毛布。満足げにそれを一度見やり、紅葉はそのまま蒼太の毛布にもぐりこんだ。