「本当に世話がやけるねぇ。君達は」
 蒼太の部屋で、晩酌にあやかりながらアキラが言う。
「はぁ。すみません」
 蒼太は、苦笑気味で、顔を真っ赤にして上機嫌なアキラを眺めながら答えた。
 どうやら、みかけに反してアキラはアルコールに強いほうではないらしい。グラス二杯で出来上がってしまった。
「大丈夫ですか?」
「まだまだぁ」
 元気はあるようだ。
 アキラを観察しながら、おかわりを注ぎ、自分のグラスにもビールを注ぐ。
「電話、したら?」
 アキラに言われて、蒼太はテーブルに置かれたメモに目を落とす。
 すぐにでも、かけたいのはやまやまだったが、何かがそれを引き留めた。
 ふと思い立ち、蒼太はメモの余白部分を破ると、それに自分の番号を書いてアキラに渡した。
「これを、紅葉さんに渡してもらえますか?」
「ん? なんでだ?」
 アキラが不思議そうな顔になる。