なのにどうだ。
 今、目の前にいる青年は、今時珍しく、誠実を絵に描いたような好青年で、しかも、悔しいくらい紅葉を大事に思ってるのがひしひしと伝わってくる。
「あーあ。駄目だこりゃ」
 アキラは大きくため息をついた。
 紅葉は見付けてしまったのだ、自分だけのスーパーヒーローを。
 そして、それは自分ではない。
「で、これからどーすんの?」
「一緒にいたいと、思います」
「結婚でもするつもりか? 大変だぞ。お前、まだ若いし」
「紅葉さんが望むなら」
 蒼太はあっさりと言いきった。
「ふーん」
 返す言葉もない。
「ちぇ。つまんねーの」
 すねたように言うアキラに蒼太がクスリと笑う。
「紅葉さんみたいだ。幼馴染みって似るんですね」
「うるせぇ」
 なおもすねるアキラに神妙な顔で蒼太が言った。
「大事にしてたんですね。すみません」

 ――ドキリとした。

「僕なんかじゃ心配でしょうけど。あなたに負けないくらい大事にしたいと思ってます」
 澄んだ黒い瞳は揺らぎひとつない。
 なんてことだ。
 アキラは思った。

『俺まで惚れちまいそうだ』