電車を待ちながら、アキラは紅葉に電話をかけた。紅葉は出ない。何かしていて気が付かないのだろうか。
『まぁ、まだ電話してから二日だから大丈夫か』
 あの時話した様子からしても、紅葉は間違いなく、まだ例の男のところに居るだろう。
 妙な確信もあった。
 躊躇いなく電車に乗り、もう一度電話をかけ、留守電に伝言を残す。
「アキラでーす。今そっち行ってっからな~。六時前には着くから迎えヨロシク」
 特急の切符を見て、指定の座席番号を探して座る。
 時刻表を見る限りでは、紅葉がいる町までは四時間ほどある。
『随分遠くまで行ったもんだ』
 幸い乗り換えの必要はないようだし、特にすることもないのでひと眠りすることにした。