そんな蒼太を微笑ましい気分で見ていた紅葉だが、ふとテーブルの上で着信ランプを光らせている、自分の携帯に気が付いた。
 そういえば出かける時、置きっぱなしにしていたのを思いだし、携帯を手に取る。
 留守電を聞くと、脳天気に、会いに来るから駅まで迎えにこいと言うアキラの声。
「はぁ!?」
 思わず、声を上げた紅葉に蒼太が振り返る。
「どうかしたんですか?」
「この前言ってた、友達。今あたしに会いに向かってるみたいだ」
「え?」
「六時前に駅に着くらしい」
 紅葉は軽くため息をついた。
「幼馴染みなんだけど、どうも落ち着きない奴で、ごめん」
「いいですよ。そうですね、じゃあそろそろ戻りましょうか」
 蒼太はさらりと、そう言ってくれる。
 紅葉はホッとして帰り支度を始めた。