その扉の向こうに

約束の日がやってきた。
綺麗な格好かどうか分からないけれど、お出掛け用のワンピースを着たから多分大丈夫だろう。

佐保ちゃんの家は大きい。庭に蔵があってそこに沢山の貴重な本が保管されている。たまに何処かの大学の先生がやってきて史料として提供するぐらいだ。

人の出入りが多いせいか、蔵の中は埃っぽさもなく、少し暗めの図書室と言っていい。

縁側で本を読むのも捨てがたいけれど、今日は蔵で本を読むことを決めていた。

「こんにちは、知紗です」

門に備え付けられているインターホンに向かって声をかける。

空いてますよ、という叔母さんの声がして門をくぐった。整えられた庭を抜けるとようやく玄関が見えてくる。
叔母さんの言ったとおり施錠はされていない。

からからと扉が軽い音をたてると佐保ちゃんが丁度奥からやってきた。

「いらっしゃい。よしよしちゃんと綺麗な格好してきたのね」

「佐保ちゃんの言うとおりしてきたよ。今日は何するの?」

「どうせ蔵で読書でしょ?本当本が好きなのね。知紗が来ると父さんが喜ぶのよね。さ、あがって」

綺麗な格好をする様に言った意味はまだ教えてくれなかった。
そういう佐保ちゃんは普通のTシャツにジーパンだった。