その扉の向こうに


「話があるの」

佐保ちゃんは私を見つけると、そう言った。いつもと違う佐保ちゃんに、私はただ頷いた。

家にはお母さんもお父さんも仕事で誰もいない。少し不安だったけれど、取り敢えず何時もの様に家に上がって貰う事にした。

「話ってなに?……大事な事っぽいけど、なんかあったの?」

リビングで向かい合わせに私達は座っていた。中々話し始めない佐保ちゃんに変わって私が口を開いた。

「……私、知紗には言ってなかったけど、未来が見えるの。未来だけじゃなくて色々なものも」

「……え、何それ」

いきなりの告白に、しかもそれが未来が見えるなんて、私は馬鹿みたいに佐保ちゃんを見つめてしまった。

はっきり言って、佐保ちゃんがそんな力を持っているなんて聞いた事もないし、叔母さんも叔父さんも言ってなかった。

黙り込んだ私に、今度は佐保ちゃんが口を開いた。

「変な事言ってるのはわかってる。でもね、知紗には信じて貰わないと困るの。…知紗さ、先生に一目惚れしたでしょ」

「え、あ、そ、そんな事ないよ!」

心臓を力一杯掴まれた様な気分だ。
今思えば確かにあれは一目惚れ、と言えるけれど、あの日のこの瞬間まで自分の感情に気付いていなかった。

佐保ちゃんの言葉で、私は先生に一目惚れしたと気付いたのだ。