その扉の向こうに

私は先生の語る歴史に飲み込まれ、いつしか耳の奥の音は消えていた。

先生が語るせいかもしれない。

でももっと知りたいと思った。
先生の知っている歴史を、もっと奥深く。

全て話し終わった先生は疲れたのか、でも満足そうな表情で私を見ていた。

何か言ったらこの余韻が消えてしまいそうだった。何か適切な事を言いたかったけれど、私にはそんな言葉が見つからない。

またしても黙る私に、先生はまた慌てた様に言った。

「ごめん、興味なかったよね」

「全然!その、とっても楽しかったです。何て言うか、初めて歴史が面白いって思いました」

「本当?そう言ってくれると助かるよ。こんな話、誰も聞いてくれないでしょ?今度発表があるのにさ、ぶっつけ本番はいくらなんでも辛いから。本当にありがとうね」

先生が笑う。私も嬉しくなる。
だからついこんな事を言ってしまったのかもしれない。

「また、お話聞かせてくれませんか?」

言った後、何て事を言ってしまったのかと思ってももう遅い。
先生も予想外だったのか反応が薄い。

「あ、えっと、その、別にいいんです!先生だってご迷惑ですよね?だからその…」

あぁもう最悪だ。次回の約束なんて、先生は偶々私がいたから話してくれたのに。

さっきまで遠くなった心臓の音もうるさい。顔も熱がでたみたいに熱い。

本当に嫌だ。

でも今日は何処までもついている日らしい。先生がもっと嬉しそうな顔をしてくれたのだ。

「いいの?嬉しいな。誰も興味持ってくれないし、発表の練習に付き合ってくれないしさ。君さえ良ければいつだって僕は話に行くよ」

「え、本当ですか?」

「もちろんだよ」

目の前が明るくなった気がした。先生と一緒にいられる事がこんなにも嬉しい。
先生も目の前で笑っていてくれる。

私の恋は、まだ光り輝き始めたばかりだった。