「田中さん?どうしてここに…?」
先生が驚いた顔のまま言った。
初めて見る顔に少し嬉しくなる。
私達の距離は本棚一つ分あった。思い切って先生に歩み寄り、距離を縮める。先生はいつものスーツ姿ではなく、白いシャツに濃い色のズボン、そして眼鏡をかけていた。
今更緊張がやってきた。
「従姉妹の家なんです。たまに蔵に入れて貰って本を読ませて貰ってるんです」
「田中さんは本が好きなの?」
「はい。あ、あの先生は?」
「僕はね、調べ物。ここには郷土資料が沢山保管されているしね。学生時代、教授に連れてきて貰ってから来させてもらってるんだ」
いつも物語しか読まない私にとって、先生の言う郷土資料は本棚のどこにあるのかすら全く分からなかったけれど、先生がそれを読んでいるんだったら、私も読めば会話が弾むかも、なんて安直に思っていた。
だけど先生は勉強しに来ている。あまり話し掛けるのは悪いだろう。
休日に、しかも、先生の私服まで見られたのだ。
「私、邪魔ですよね…、母屋に戻ります」
「とんでもない。田中さんは読む本があるの?」
「いや、今日は特に決まってません」
「じゃあ…お願いがあるんだけど、いいかな?」
「私で良ければ…何でしょうか?」
「今までの調べ物のまとめを聞いてもらいたいんだ」
職業病みたいなものだね、と先生が苦笑した。
私にとっては神様からのプレゼントに思えた。二人きりの授業。私だけの先生になってくれるのだ。
先生が驚いた顔のまま言った。
初めて見る顔に少し嬉しくなる。
私達の距離は本棚一つ分あった。思い切って先生に歩み寄り、距離を縮める。先生はいつものスーツ姿ではなく、白いシャツに濃い色のズボン、そして眼鏡をかけていた。
今更緊張がやってきた。
「従姉妹の家なんです。たまに蔵に入れて貰って本を読ませて貰ってるんです」
「田中さんは本が好きなの?」
「はい。あ、あの先生は?」
「僕はね、調べ物。ここには郷土資料が沢山保管されているしね。学生時代、教授に連れてきて貰ってから来させてもらってるんだ」
いつも物語しか読まない私にとって、先生の言う郷土資料は本棚のどこにあるのかすら全く分からなかったけれど、先生がそれを読んでいるんだったら、私も読めば会話が弾むかも、なんて安直に思っていた。
だけど先生は勉強しに来ている。あまり話し掛けるのは悪いだろう。
休日に、しかも、先生の私服まで見られたのだ。
「私、邪魔ですよね…、母屋に戻ります」
「とんでもない。田中さんは読む本があるの?」
「いや、今日は特に決まってません」
「じゃあ…お願いがあるんだけど、いいかな?」
「私で良ければ…何でしょうか?」
「今までの調べ物のまとめを聞いてもらいたいんだ」
職業病みたいなものだね、と先生が苦笑した。
私にとっては神様からのプレゼントに思えた。二人きりの授業。私だけの先生になってくれるのだ。
