その扉の向こうに

さて何を読もう。

並んだ本を見回す。
どれを読もうかと考える時が一番楽しい。

表紙が、題名が静かなに私に語りかけてくる。


ゆっくりと視線で背表紙をなぞる。
どれにするか直ぐ決まる日もあるけれど、今日は中々決まらなかった。

本棚を何週かした時だった。
観音開きの扉が開く、重い音が響いた。

誰かが、静かに入ってきた。
私は誰だろうと思って扉の方に振り向いた。

見覚えのあるその人は、少し驚いた顔をしていた。

だから佐保ちゃんは綺麗な格好をして来いって言ったんだ。


私は何故か落ち着いていた。
そしてその人の名前を呼んだ。


「先生」