その扉の向こうに

今でも覚えている。
初めて先生を見た時の事を。

その日は春の穏やかな日で、丁度高校の入学式の日だった。
緊張していたせいか、他の事はピントがずれたように覚えていないのに、

その瞬間だけは今も色褪せずに覚えている。チャイムが鳴った後に、ガラガラと音を立てて開いた扉から先生は入ってきた。

時間が止まった、と言えば大袈裟になるだろうか。でもあの時確かに私の目には先生しか見えなかった。

教室内に降り注ぐ明るい春の日差しを集めたかのように、先生がひどく明るくみえた。そして、同時に懐かしい感じがしたのをよく覚えている。

少女漫画の様に、私は先生に一目惚れしてしまった。

今でこそ先生の事を少し冷静に見る事が出来る様になったから思う。
先生は決して一目惚れする様な容姿ではない。よく言えば好青年で、どこにでもいる様な若い男の人だ。