Trick OR Treat?


「あー…」

ダンス部はのぞいたし、よく練習風景は見るけど、基礎は何もやってないし、振りは先生が考えたやつをそのままだし、練習よりおしゃべりの方が多いし…

そんなダンス部には入りたくなかった。

あたしが今まで一生懸命やってたことを、そんな風にしてる人たちの集団には入りたくなかった。

「あたしのダンスはなかなか見えないよー。お客さんが一人だけの舞台ってのも初めてだー!」

とだけ言って、適当に曲を流す。

初めのポーズは適当。

それから、基本のポーズとか技とか決めて行く。

シャッター音がなってるのかなってないのかはわかんないけど、そんなのは知らない。

踊り始めたら踊ることしか考えられない。

曲が終わりに近づけば近づくほど、もっと踊っていたくなる。

小さな控えめな拍手の音。

「いい写真とれた?」

「うん。最高のが撮れた。」

よかった、と言って笑う。

「…ねぇ、結城さん。」

篠原くんがあたしの顔をしっかり見つめる。

「…あのさ、好きな人とかいる?」

いきなりだなぁ…

「…いる、よ。」