Trick OR Treat?


「結城さん、教科書忘れたから見せて。」

授業中、そろそろと机をくっつけて来た篠原くんに少しドキドキする。

「何、緊張でもしてるの?」

「べ、べべ別にそんなことないよっ。」

篠原くんはクスッと笑って黒板に目線を移す。

ぁ、そういえば綺麗。こーやって見るとまつげも長いし、肌も白いし…おまけに肌も綺麗だし。

「見過ぎ。」

突然あたしの方を向いて笑う。

あれ、こんなに笑う人だったっけ。

「ご、ごめん。」

「こら、そこおしゃべりしない!」

先生の声に慌ててすみませんと謝って一生懸命先生の言葉を聞く。

…全然入ってこないよ…先生の言葉なんか…

篠原くんとの距離が…近すぎる…

あたし、緊張してるんだ。

「結城さん、ここ、教えて?」

「…え?」

「今問題演習中だよ。あれ、結城さん、英語得意だったよね?」

ぁ、うん、とだけ頷いて問題を見る。

ぁ、これ予習しなきゃ、って思って全部問いたやつだ。

「これは、」