「知香ー!トリックオアトリート!」
「ん。」
それからその言葉をいいに来る全員に、飴を一つだけ渡した。
ていうか、それしか渡すものなかったし。
「椎野ー。」
「はい、」
「今日、ちょっと頼みたいことあるんだがいいか?」
先生の言うことに、はい、と頷く。
どうせ対したことじゃないだろうし。
それに、あの先生が学級委員に頼み事をするのはいつものこと。
もう慣れた。
「知香ちゃん、帰り、教室で待ってるね。」
こそっと、嘉人が私に告げる。それにしっかり頷いて返すと、嘉人は、男の子たちの塊の中へと戻って行った。
まったく、こんな日に限って時間が進むのは何て遅いんだろう。
時間は平等だなんて誰が決めたんだか。