翌日、まだ納得がいかないままついに食事会の当日を迎えた。
私は学校から帰るとすぐに出掛ける支度を始める。
「桜、準備は出来た?」
「うーん。」
あまり気がのらないまま去年買ったお気に入りの黒のワンピースに腕を通すと、玄関のドアを開けて待っているお母さんの許へとぼとぼと向かった。
「じゃあお母さん鍵掛けるから、桜先に車に乗ってなさい。」
「分かった。」
私は玄関先に止まっているお父さんの車の後部座席に乗り込んだ。
運転席には黒のスーツを着て重苦しい雰囲気を漂わせながらお父さんが待っていた。
しばらくするとお母さんが助手席のドアを開けて乗り込む。
「じゃあ、行こうか。」
お父さんは静かに一言そう言うと車を走らせた。
その場所へ向かうまで私達は何も言葉を交わす事なくしばらくの間車内の中は沈黙が続く。
「着いたぞ。ここだ。」
半時間ほど車を走らせた頃、お父さんは見た事のない高級そうなホテルの玄関前の駐車場に車を止めた。
ここどこだろ?
私はきょろきょろとしながら車から降りると、まじまじとそのホテルを見つめる。
ざっと数えて20階以上あるホテルの入り口の上には、『北城ホテル』とライトアップされてある。
嘘…ここも北城グループ!?
私は一瞬たじろぐ。
「桜?大丈夫か?」
お父さんは少しよろめきかけた私の肩を両手でガシッと掴み、不安そうに私の顔を見つめた。
「う、うん大丈夫。ねぇお父さん、このホテルも北城って人のとこなんだね。」
私はもう一度ホテル全体を見回す。
「ああ…。桜、今日は本当にすまないね。ちゃんと決着を付けるから。じゃあ、そろそろ時間だ、中へ入ろう。」
お父さんは腕に付けていた時計をチラッと見ると少し焦った様に私をホテルへ促した。
「うん…。」
お父さんが緊張しているのはすぐに見て取れた。
私はその様子を察すると余計に複雑な思いでいっぱいになりながら、お父さんと一緒に入り口へと足を運ばせる。
私達が自動ドアを潜り抜けて入って来た時にはお母さんはすでにロビーのソファに座って待っていた。