制服のまま自宅に戻った葵は、なんとかメイクを落として、パジャマに着替える。仁に手間を取らせないようにと、ドラッグストアで食料品と薬を買い込み、自室に持ち込んだ。





「お水と、体温計に食料、スマホと……こんなもんね」





気が張っていた。怠さは当然あったが、一人で帰宅しなければならないという意識が、葵を奮い立たせていた。しかし、家に戻ると、それは途端に身体から抜け、脱いだ制服はそのままでベッドにもぐりこんだ。





「いけない、仁さんに連絡をしておかなくちゃ」





夕食の用意が出来ない葵は、毎食自宅で食べる仁にメールを送る。



体調が悪いなど、口が裂けても言えないと思っている彼女は、食事に誘われたと嘘の理由で、外食をしてきて欲しいと仁にメールをした。





「これでいいわ」





やっと葵は、目を閉じた。







「潤」

「何でしょうか?」

「デートか?」

「いいや、予定はない」





葵からのメールを見て、仁は潤を夕食に誘おうとしていた。





「飯を食っていかないか?」

「久しぶりじゃん」





結婚してからというもの、接待以外で、外食はしていなかった。潤とは久しぶりになる。





「葵が、食事をしてくるみたいなんだ」

「葵ちゃんも、少し、気を緩ませてあげないとな。仕事に家事じゃ大変だ」

「やらなくていいと言うんだが」

「そんなの無理に決まってる。俺達のように、家政婦さんが日常的にいる家庭で育ってないんだ、家政婦や業者をお願いすれば、逆に彼女を追いこむことになる。止めておけよ」

「分かってる」





葵が、家で苦しんでいることなど、思ってもいない仁は、潤と久しぶりの食事に行く。今日に限って、仕事が早く終わったのだった。



葵も羽を伸ばしていると思っている仁は、潤と楽しんで食事をして、いつものように葵にデザートを買ってきていた。



いつもよりも早く家に着いた仁は、当然、葵が起きていると思っていたが、家の中は、電気も点いておらず、静まりかえっていた。





「靴があるから帰ってるよな」





玄関で、葵の靴は確認した。自分の腕時計をみると、まだ寝る時間でもない。この時間に帰ってくると、葵は、洗濯物を畳んだりして、家事をしていた。しかし、今日は、姿がない。ソファにビジネスバッグを置き、ネクタイを緩めると、仁は葵の部屋に行く。





「葵?」





ドアをノックしながら声を掛ける。部屋の中からは、葵の返事があった。





「はい」





葵の返事と同時に、仁はドアノブに手をかけ、ドアを開けた。それと同時に、葵のだめ!と言う声が聞こえた。すでに半分ドアを開けていた仁は、中が暗くスタンドの灯りだけだと言うことが分かった。そして、床に脱いだ服が散乱してあるのもわかった。

拒否をされたが、仁は、そのままドアを開けた。