「あ~、ありがとう~」
葵は、両手を挙げて、背伸びをした。
「で、どうよ、新婚生活は」
聞く久美に、じろりと恨むように見た。
「おっと? 何かあるわね」
興味津々に聞く。
「無口なのは知ってるけど、会話がない」
「会話ねえ。それは重大ね。でも、一週間休みだったじゃない? その間はどうしてたの?」
「仁さんは翌日から仕事だったから、顔を合わせたのは朝くらいだったけど」
「夜は?」
「毎日遅い」
「そうなんだ」
新婚夫婦なら幸せオーラが全身から漂うのが普通だが、葵の場合は、すっかり気疲れしている。
「立場が立場だし、遅い日が多くなるとは聞いていたからいいんだけど、団地っ子だった私には、広すぎる家が途轍もなく怖いのよ」
「わかる~」
「自分の時間を有意義に使う方法を見つけてみるわ」
「そうだね。あ~私も玉の輿に乗りたい~」
自立心のとんだ女であっても、上昇志向が強い女であっても、仕事がつらくなった時に思うことだ。
久美は、深く聞くことをしない。何か吐き出すときに受けてあげればいいと思っている。
広報は、メディア対応やホテル内のイベントなどで、忙しい部署だが、働き方改革ということで、ホテルを挙げて、ノー残業に取り組んでいた。その為に葵は、残業なく家に帰って来れた。しかし、広報は、忙しい部署だ。毎日残業がないわけじゃない。仁もそのことは了承済だった。
少しでも近づけたらと努力する葵に対し、仁は仕事が忙しく、朝、顔を合わせるくらいだった。
結婚して初めての週末を迎えた。
朝しか顔を合わせなかった仁と、初めて終日過ごすのだ。朝から葵は緊張していた。ゆっくりと眠っていたかったが、習慣でいつもの時間に目が覚めてしまった。二度寝も考えたが、やることはたくさんあって、それどころではなかった。
「すっかりすっぴんも平気になったな」
部屋着に着替え、顔を洗う。鏡に映った顔を見て、メイクをする気などなくなっている。パンパンと顔に化粧水を叩きこみ、乳液を塗りこむ。
「掃除に洗濯ね」
狭い団地と違い、用途によって、部屋が作られている。洗濯をしに、場所を移動する。
「おはよう」
「おはようございます」
仁が起きてきた。まだ眠そうな顔をしている。
「昨日も遅かったんじゃないですか? まだ眠っていたらどうですか?」
「目が覚めたからいいよ」
「うるさかったですか?」
「そうじゃないよ」
「あの……ご飯は……食べます?」
「そうだね」
道で、偶然あった上司と部下の様だ。話しを切ると、葵は、キッチンへ向かう。
「ごはんね……」
つくづく母親は凄いと感じた一週間だった。慣れない家事に、他人とのぎこちない生活。もっと眠っていたかったが、葵の性格では、出来ないことだ。
テキパキといつもの様に支度をする。メニューなど考えなくていい簡単な食事だ。芸能人などインスタにあげられる盛り付けの美しい食事は、頑張ってみたところで、出来ない。無理しないことが長続きの秘訣だと、家を出る前に母親の恵美子に言われていた。
「お待たせしました」
仁がいるリビングまで呼びに行く。少し声を出せば、家族みんなに聞こえる団地とはえらい違いだ。面倒くさいと、毎回思っている。
「ああ」
新聞を折りたたんで、ダイニングに行く。苦手なコーヒーマシーンも操作できるようになり、いい香りのコーヒーが淹れられていた。
「いただきます」
食事の挨拶をして、食べ始める。結婚して初めての週末は、相変わらずの沈黙で始まった。
食事を済ませ、片付けを始める葵に対して、仁は、リビングで新聞の続きを読み始める。洗濯室にいる葵は、仁の下着を前に立ち尽くしていた。
「これからは、私が洗うのね」
父親や、双子の弟達の下着は慣れていたが、他人の下着は、戸惑いがある。
「えい!!」
考えていても洗わなくてはいけない。葵は、両手を大きく広げて、抱えて洗濯機へ放り込む。
スタートのスイッチを押して、完了した。
「後は、掃除か」
うんざりする家事の始まりだった。
葵は、両手を挙げて、背伸びをした。
「で、どうよ、新婚生活は」
聞く久美に、じろりと恨むように見た。
「おっと? 何かあるわね」
興味津々に聞く。
「無口なのは知ってるけど、会話がない」
「会話ねえ。それは重大ね。でも、一週間休みだったじゃない? その間はどうしてたの?」
「仁さんは翌日から仕事だったから、顔を合わせたのは朝くらいだったけど」
「夜は?」
「毎日遅い」
「そうなんだ」
新婚夫婦なら幸せオーラが全身から漂うのが普通だが、葵の場合は、すっかり気疲れしている。
「立場が立場だし、遅い日が多くなるとは聞いていたからいいんだけど、団地っ子だった私には、広すぎる家が途轍もなく怖いのよ」
「わかる~」
「自分の時間を有意義に使う方法を見つけてみるわ」
「そうだね。あ~私も玉の輿に乗りたい~」
自立心のとんだ女であっても、上昇志向が強い女であっても、仕事がつらくなった時に思うことだ。
久美は、深く聞くことをしない。何か吐き出すときに受けてあげればいいと思っている。
広報は、メディア対応やホテル内のイベントなどで、忙しい部署だが、働き方改革ということで、ホテルを挙げて、ノー残業に取り組んでいた。その為に葵は、残業なく家に帰って来れた。しかし、広報は、忙しい部署だ。毎日残業がないわけじゃない。仁もそのことは了承済だった。
少しでも近づけたらと努力する葵に対し、仁は仕事が忙しく、朝、顔を合わせるくらいだった。
結婚して初めての週末を迎えた。
朝しか顔を合わせなかった仁と、初めて終日過ごすのだ。朝から葵は緊張していた。ゆっくりと眠っていたかったが、習慣でいつもの時間に目が覚めてしまった。二度寝も考えたが、やることはたくさんあって、それどころではなかった。
「すっかりすっぴんも平気になったな」
部屋着に着替え、顔を洗う。鏡に映った顔を見て、メイクをする気などなくなっている。パンパンと顔に化粧水を叩きこみ、乳液を塗りこむ。
「掃除に洗濯ね」
狭い団地と違い、用途によって、部屋が作られている。洗濯をしに、場所を移動する。
「おはよう」
「おはようございます」
仁が起きてきた。まだ眠そうな顔をしている。
「昨日も遅かったんじゃないですか? まだ眠っていたらどうですか?」
「目が覚めたからいいよ」
「うるさかったですか?」
「そうじゃないよ」
「あの……ご飯は……食べます?」
「そうだね」
道で、偶然あった上司と部下の様だ。話しを切ると、葵は、キッチンへ向かう。
「ごはんね……」
つくづく母親は凄いと感じた一週間だった。慣れない家事に、他人とのぎこちない生活。もっと眠っていたかったが、葵の性格では、出来ないことだ。
テキパキといつもの様に支度をする。メニューなど考えなくていい簡単な食事だ。芸能人などインスタにあげられる盛り付けの美しい食事は、頑張ってみたところで、出来ない。無理しないことが長続きの秘訣だと、家を出る前に母親の恵美子に言われていた。
「お待たせしました」
仁がいるリビングまで呼びに行く。少し声を出せば、家族みんなに聞こえる団地とはえらい違いだ。面倒くさいと、毎回思っている。
「ああ」
新聞を折りたたんで、ダイニングに行く。苦手なコーヒーマシーンも操作できるようになり、いい香りのコーヒーが淹れられていた。
「いただきます」
食事の挨拶をして、食べ始める。結婚して初めての週末は、相変わらずの沈黙で始まった。
食事を済ませ、片付けを始める葵に対して、仁は、リビングで新聞の続きを読み始める。洗濯室にいる葵は、仁の下着を前に立ち尽くしていた。
「これからは、私が洗うのね」
父親や、双子の弟達の下着は慣れていたが、他人の下着は、戸惑いがある。
「えい!!」
考えていても洗わなくてはいけない。葵は、両手を大きく広げて、抱えて洗濯機へ放り込む。
スタートのスイッチを押して、完了した。
「後は、掃除か」
うんざりする家事の始まりだった。



