休みが明けた日、出勤した仁は、潤ににやにやと詰め寄られていた。





「どうよ、新婚生活は」

「まだ一日たっただけだ」

「なんで、休みを取らなかった?」

「挨拶周りもあるし、休めば仕事がたまる。それだけだ」

「いくら役員であっても、俺だったら休んで新婚旅行に行くけどね」





潤に言われるまでもなく、仁は休みを取ろうかと挙式前まで悩んでいた。トップとしての責任より、葵と過ごす時間が大切だった。だが、休みを取らなかった。



潤が秘書課に戻ると、仁は、窓を眺め、昨日の一日を思い出していた。部屋に入ったまま出てこない葵。昼になり、昼食を作るために部屋から出てきて、会話のない食事を一緒に取る。



夕食も変わらず、葵が作った物を食べた。気まずく思った葵が、





「料理をあまりしてこなかったので、ごめんなさい。これからはもっとレパートリーを増やして、仁さんのお義母さんにも教わって、料理をしますから」

「十分、おいしい」





このたった二言だった。





「やっぱり俺がいけないよな」





さらに、朝、出勤する仁を見送る葵を、視線も合わせず、出てきてしまった。





「まずいよな」





反省をしている仁だ。

休みが明けた葵は、各部署に挨拶周りをしていた。持参した菓子は、全て義母が揃えた物だった。





「部長、その節は大変お世話になりました」





デスクの前に立ち、菓子折りを差し出す。





「いやあ、立花さん。いいお式だったねえ、当ホテルのカタログ協力も快く引き受けてくださって、本当に名波様には感謝しているよ」





厳かな式に豪華な披露宴。今どきではない挙式披露宴をした葵達は、ホテルの希望で、写真の一部をホテルのウエディング紹介ページに載せることになった。HPにも当然掲載され、葵は恥ずかしさでいっぱいだった。



「お恥ずかしい」

「いや、冗談抜きに、君の花嫁姿は良かったねえ。近年は、和洋装の打掛姿ばかりでねえ。流行りで仕方がないが、やっぱり、基本は素晴らしい。そんな風に思うのは、年なのかねえ」

「いえ、そうおっしゃっていただいて嬉しいです」

「仕事は続けるそうだが、名波様の仕事柄、君が同伴することもあるだろう。共働きは女性の方に負担がかかってしまうから、無理をしないように」

「ありがとうございます」





ずしりと重い言葉を受け、自席に戻る。午前中一杯、挨拶回りをした葵は、ドスンと大きな音がしそうなほど、勢いよく椅子に座った。





「はい、お疲れ」





久美がコーヒーを淹れ、葵のデスクに置いた。