「少しでも買い込んでおいて良かったな」
冷蔵庫は、たっぷりと食材が入る大きさで、冷凍専用の冷凍庫まで設置されていた。真新しい冷凍庫は、新婚生活の為に仁が用意した物だ。基本の調味料、日持ちのする食材を買い込んで、冷蔵庫に入れてあった。
「起きたらご飯が出来てたのに……」
実家暮らしの楽さと、母親のありがたみをしみじみ思う。
米を炊く元気もなく、シリアルとベーコンエッグ、ミニサラダとコーヒーを用意する。だが、このコーヒーが問題であった。
「まったく使い方が分からない」
コーヒー好きの仁が、この機会に新機種を購入した。そのマシーンが複雑すぎて、葵には操作が出来ない。
「仕方がない、水で我慢しよう」
棚からコップを取り出した時、仁が声を掛けた。
「コーヒーなら淹れようか?」
いつの間に起きていたのだろうかと、葵は、コップを手に、身体がビクッとなった。
「おはようございます」
「おはよう」
「いろいろな種類のコーヒーを淹れられるんだけど、操作が、複雑でね。ゆっくりと教えるから」
「ありがとうございます」
仁は、パジャマ姿で、いつも撫でつけられている髪が、おろされていた。いい男は、どんな姿でも様になる。しかし、はっと気が付いたのか、自分は素顔だった。いままでメイクした顔しか見せたことはなく、異常に恥ずかしくなった。しかし、顔を隠すことも出来ず、俯く。
「コーヒーはブラック? 濃いめ? それとも薄く?」
「あ、えっと、濃いめで」
「わかった」
手際よく、マシーンに豆を投入して、挽く。大きな音と共に、豆のいい香りがキッチンに広がる。立花家のリビングほどもありそうな広いキッチンは、最新式のシステムキッチンが設置された。ステンレスもガス台もピカピカで、主婦ならば目を輝かせるだろう。
仁がコーヒーを淹れている間に、葵は、二人分の卵とベーコンを焼き、カットサラダを皿に盛りつけた。料理と言えるものではない。ただ焼いて、添えるだけだ。しかし、結婚生活はこれから続く。毎日の献立に頭を悩ませることは、間違いない。
準備が出来た食事からテーブルに運び、コーヒーを持って行く。
大きく長いテーブルに、向かい合わせで座る。
「いただきます」
お互いにい言いあい、食べ始める。実家では、騒々しいのが当たり前で、テレビの音、双子の弟たちのケンカや母親の小言。うるさいと感じていたころが、懐かしい。
互いにチラチラと見ているが、話しを切り出すこともなく、黙々と食べているだけだ。既に素顔で恥ずかしいと言うことも、葵の中から消えていた。
何の会話もないまま、食事が終わり、仁はソファで新聞を読み、葵は、キッチンで後片付けをしている。食器は食洗器に入れ、スイッチを回せばいい。片づけは簡単で早く済ませられた。手をフキンで拭いて、点検をするように、キッチンを見る。
「終わり」
電気を消し、仁がいるリビングへやってくる。
「あの、片付けは終わりました。部屋で荷物の整理をしているので、何か用事があれば呼んでください」
「あ、うん……わかった」
失礼しますと、頭を下げ、葵は部屋に戻る。ドアを開けて、後ろ手に閉めると、
「……」
今のは、なんだったのかと、葵は首を傾げた。
「なに? 今のは、何?」
葵には、理解が出来ていないようで、部屋をうろうろして、ベッドに倒れ込む。
「住み込みの家政婦……?」
いや、違うと、頭を振って、気持ちを入れ替える。ベッドからまた起き上がると、
「何も考えずに片づけよう」
身体を動かしていれば、余計なことは考えずに済む。葵は、昼までの時間を片づけに費やした。
冷蔵庫は、たっぷりと食材が入る大きさで、冷凍専用の冷凍庫まで設置されていた。真新しい冷凍庫は、新婚生活の為に仁が用意した物だ。基本の調味料、日持ちのする食材を買い込んで、冷蔵庫に入れてあった。
「起きたらご飯が出来てたのに……」
実家暮らしの楽さと、母親のありがたみをしみじみ思う。
米を炊く元気もなく、シリアルとベーコンエッグ、ミニサラダとコーヒーを用意する。だが、このコーヒーが問題であった。
「まったく使い方が分からない」
コーヒー好きの仁が、この機会に新機種を購入した。そのマシーンが複雑すぎて、葵には操作が出来ない。
「仕方がない、水で我慢しよう」
棚からコップを取り出した時、仁が声を掛けた。
「コーヒーなら淹れようか?」
いつの間に起きていたのだろうかと、葵は、コップを手に、身体がビクッとなった。
「おはようございます」
「おはよう」
「いろいろな種類のコーヒーを淹れられるんだけど、操作が、複雑でね。ゆっくりと教えるから」
「ありがとうございます」
仁は、パジャマ姿で、いつも撫でつけられている髪が、おろされていた。いい男は、どんな姿でも様になる。しかし、はっと気が付いたのか、自分は素顔だった。いままでメイクした顔しか見せたことはなく、異常に恥ずかしくなった。しかし、顔を隠すことも出来ず、俯く。
「コーヒーはブラック? 濃いめ? それとも薄く?」
「あ、えっと、濃いめで」
「わかった」
手際よく、マシーンに豆を投入して、挽く。大きな音と共に、豆のいい香りがキッチンに広がる。立花家のリビングほどもありそうな広いキッチンは、最新式のシステムキッチンが設置された。ステンレスもガス台もピカピカで、主婦ならば目を輝かせるだろう。
仁がコーヒーを淹れている間に、葵は、二人分の卵とベーコンを焼き、カットサラダを皿に盛りつけた。料理と言えるものではない。ただ焼いて、添えるだけだ。しかし、結婚生活はこれから続く。毎日の献立に頭を悩ませることは、間違いない。
準備が出来た食事からテーブルに運び、コーヒーを持って行く。
大きく長いテーブルに、向かい合わせで座る。
「いただきます」
お互いにい言いあい、食べ始める。実家では、騒々しいのが当たり前で、テレビの音、双子の弟たちのケンカや母親の小言。うるさいと感じていたころが、懐かしい。
互いにチラチラと見ているが、話しを切り出すこともなく、黙々と食べているだけだ。既に素顔で恥ずかしいと言うことも、葵の中から消えていた。
何の会話もないまま、食事が終わり、仁はソファで新聞を読み、葵は、キッチンで後片付けをしている。食器は食洗器に入れ、スイッチを回せばいい。片づけは簡単で早く済ませられた。手をフキンで拭いて、点検をするように、キッチンを見る。
「終わり」
電気を消し、仁がいるリビングへやってくる。
「あの、片付けは終わりました。部屋で荷物の整理をしているので、何か用事があれば呼んでください」
「あ、うん……わかった」
失礼しますと、頭を下げ、葵は部屋に戻る。ドアを開けて、後ろ手に閉めると、
「……」
今のは、なんだったのかと、葵は首を傾げた。
「なに? 今のは、何?」
葵には、理解が出来ていないようで、部屋をうろうろして、ベッドに倒れ込む。
「住み込みの家政婦……?」
いや、違うと、頭を振って、気持ちを入れ替える。ベッドからまた起き上がると、
「何も考えずに片づけよう」
身体を動かしていれば、余計なことは考えずに済む。葵は、昼までの時間を片づけに費やした。



