「う~ん」





朝日が眩しい朝がきた。今日から葵は、名波仁の妻として生活していく。その一日目がやって来た。眩しい朝日が葵を刺激して、顔をしかめる。目をこすって薄目を開けると、朝日が顔を直撃し、身体の向きを変えた。しかし目がなかなかあかない葵は、手でごそごそと枕元で何かを探していた。





「ああ、そうだった、もう家じゃないんだった」





実家であると寝ぼけてしまい、いつも時計が置いてある枕元を探したのだった。

まだ眠れそうだが、なんとか身体を起こす。





「ああ、面倒くさい。メイクを落とすのを忘れたぁ、お風呂もはいってない」





荷物を整理していない箱の中から、下着と服を出す。





「ああ、えっとバスタオルとかはあったっけ?」





確かバスルームの洗面台にタオルとバスタオルがホテルの様に収納してあったと記憶がある。





「あるな、ある、ある」





寝起きでメイクが崩れたまま、部屋を出てバスルームに行った。

マンションの中はしんとしていた。仁が起きてはいないかと、立ち止まって、人の気配がないか、気にする。





「まだ起きていないのね」





仁の気配はなく、葵は、何だかホッとしてお風呂に入った。広く大きな風呂は、贅沢で、この上なくリラックスが出来るが、自分が掃除をすることを思うとげんなりした。

風呂から出てさっぱりすると、化粧水も、乳液も荷物の中だと気づく。





「あ~もう、早く荷物を解かないと不便で仕方がないわ」





髪の毛をタオルで拭き、ドライヤーをかける。





「はあ、やっとさっぱりした。さて、朝食ね」





バスルームのデジタル時計を見ると、朝の8時だった。

ずいぶんとゆっくり眠っていたらしい。



お風呂から出ても仁の姿は見えず、部屋は静まり返っていた。

仁の部屋はリビングの向かいと言っていたが、廊下を隔てているのでリビングからは見えない。



大きな窓のカーテンをリモコンで開けると、気持ちの良い朝日が眩しい。

引っ越しの時、カーテンを開けようとしても開かず、母親とあーだこーだと揉めていたら、引っ越し業者が、「リモコンで開くんすよ」と二人に教えた。





「わあ、すごくキレイ」





仁が起きてこないよう小さな声で感激を言葉にする。

これからは此処が自分の居場所になる。早く慣れないといけない。



今日からは妻になる。かなりプレッシャーだが、なんとかなるだろう。

景色を見ながら背伸びをして深呼吸すると、お腹がなった。





「まずは、朝食からか」





好みがあまりわからない夫の為に、葵は、支度を始めた。

新生活一日目。



新婚とは言えない家の中だ。夫婦はお互いをよく知らぬままで結婚をして、部屋は別。まったくの赤の他人という感覚のまま生活が始まった。