式次第もあとちょっと、もう少しで気兼ねなく楽しめる二次会に行ける。そのことを楽しみに葵はひたすら我慢した。
披露宴も無事に終わり、招待客を金屏風の前で送り出す。頭を下げた回数はどれくらいだろうか、ずっと下げ続けた。会社の繋がりとは言っても、仁は全ての顔と名前を言い、葵を紹介した。葵は、その度に責任の重さを感じていた。
最後の招待客を送り出して、会場を二次会へと移した。
会場への案内がくるまで葵と仁は庭園に出ていた。
葵は椅子に力なく座った。
「葵、大丈夫か? 少し休むか?」
「……お腹が……」
「どうした? 体調でも悪いか?」
体調を心配する仁は葵の顔を覗きこむ。
緊張が解け、一気にお腹が空いたらしい。へこんだお腹を摩る。
「お腹が、空いた……」
「腹が減ったのか? 何か食べよう。二次会の場所に何かある。歩けるか?」
「はい」
「行こう」
座っていた葵に仁が手を差し伸べた。その手を取り葵は立ち上がる。着慣れないドレスの裾を踏んでしまい、足元がぐらついた。
「あっ……」
すると仁は葵の腰に腕を回し支えるように歩き出した。
羞恥に顔を赤らめる葵は新妻そのものだ。
緊張をしっぱなしで周りを良く見ていなかったが、やっぱり仁は人目をひくのだ。
手をひかれ腰を支えられながら会場に向かって歩く二人を、ホテルにいる客の視線が向けられている。ウエディングドレスという人目を引く姿であり、仁という更に人目を引く男が横にいて、甲斐甲斐しく葵を支えている。これからもこんなことは日常茶飯事になるのだろうと葵は感じていた。
「葵、お疲れ様。どうした? 具合でも悪いの? 会場の準備は整って皆さん集まりだしているわよ」
久美が会場に向かっていた背後から葵に声をかける。隣にいる仁に、頭を下げた。
「あ、久美。今日は本当にありがとう。ねえ、何か食べる物ある? お腹が空いちゃって。披露宴で食べられなくて……」
「そうよね。あれだけの招待客の前では食べられないよねえ? 顔ぶれが、ニュースでしか見ない政治家だの社長だのって、凄かったわよね、支配人が興奮しちゃってさあ。あ、何かサンドしたパンでも作ってもらおうか?」
興奮していたのは、久美も同じのようだ。話し方が、若干興奮気味だ。
「それでいい、頂いちゃってもいいかな?」
「バックに来て、用意してあげるから」
「うん、ありがとう。 仁さん、控え室で待っていてもらえませんか? 食事をして、メイクを直してきますから」
「ああ、わかった」
葵は仁と別れ、久美とバックにむかった。
「ねえ、やっぱり人目をひくよねえ、あの容姿。伏し目がちに見つめる瞳。今日から旦那だよ? 緊張しない?」
久美は、葵の腕を組んで歩き、ちらりと仁を振り返った。
「そうなのよ。まだよく知らないのにさあ、困っちゃうし違う意味で緊張する。それに目を見てまともに会話が出来ないのよね」
「旦那さん、葵のこと相当好きね」
「はあ? 見合いして数回しか会っていない人だよ?」
「あんたはお子様ね。名波さんの葵を見る目は、愛おしさに溢れているわよ。今日一日お世話係りをしていた私はね、その様子を見ていたからわかるの。披露宴の間だって、常に葵のことを気にして見ていたわよ」
「そ、そお?」
久美は恋愛経験豊富だ。きっと葵では気が付かない細かいところを見ていてそう感じたのだろう。
少し葵は嬉しかった。お互いの気持ちが通じ合っていない今、些細なことが近づいている一歩だと感じられるからだ。
披露宴も無事に終わり、招待客を金屏風の前で送り出す。頭を下げた回数はどれくらいだろうか、ずっと下げ続けた。会社の繋がりとは言っても、仁は全ての顔と名前を言い、葵を紹介した。葵は、その度に責任の重さを感じていた。
最後の招待客を送り出して、会場を二次会へと移した。
会場への案内がくるまで葵と仁は庭園に出ていた。
葵は椅子に力なく座った。
「葵、大丈夫か? 少し休むか?」
「……お腹が……」
「どうした? 体調でも悪いか?」
体調を心配する仁は葵の顔を覗きこむ。
緊張が解け、一気にお腹が空いたらしい。へこんだお腹を摩る。
「お腹が、空いた……」
「腹が減ったのか? 何か食べよう。二次会の場所に何かある。歩けるか?」
「はい」
「行こう」
座っていた葵に仁が手を差し伸べた。その手を取り葵は立ち上がる。着慣れないドレスの裾を踏んでしまい、足元がぐらついた。
「あっ……」
すると仁は葵の腰に腕を回し支えるように歩き出した。
羞恥に顔を赤らめる葵は新妻そのものだ。
緊張をしっぱなしで周りを良く見ていなかったが、やっぱり仁は人目をひくのだ。
手をひかれ腰を支えられながら会場に向かって歩く二人を、ホテルにいる客の視線が向けられている。ウエディングドレスという人目を引く姿であり、仁という更に人目を引く男が横にいて、甲斐甲斐しく葵を支えている。これからもこんなことは日常茶飯事になるのだろうと葵は感じていた。
「葵、お疲れ様。どうした? 具合でも悪いの? 会場の準備は整って皆さん集まりだしているわよ」
久美が会場に向かっていた背後から葵に声をかける。隣にいる仁に、頭を下げた。
「あ、久美。今日は本当にありがとう。ねえ、何か食べる物ある? お腹が空いちゃって。披露宴で食べられなくて……」
「そうよね。あれだけの招待客の前では食べられないよねえ? 顔ぶれが、ニュースでしか見ない政治家だの社長だのって、凄かったわよね、支配人が興奮しちゃってさあ。あ、何かサンドしたパンでも作ってもらおうか?」
興奮していたのは、久美も同じのようだ。話し方が、若干興奮気味だ。
「それでいい、頂いちゃってもいいかな?」
「バックに来て、用意してあげるから」
「うん、ありがとう。 仁さん、控え室で待っていてもらえませんか? 食事をして、メイクを直してきますから」
「ああ、わかった」
葵は仁と別れ、久美とバックにむかった。
「ねえ、やっぱり人目をひくよねえ、あの容姿。伏し目がちに見つめる瞳。今日から旦那だよ? 緊張しない?」
久美は、葵の腕を組んで歩き、ちらりと仁を振り返った。
「そうなのよ。まだよく知らないのにさあ、困っちゃうし違う意味で緊張する。それに目を見てまともに会話が出来ないのよね」
「旦那さん、葵のこと相当好きね」
「はあ? 見合いして数回しか会っていない人だよ?」
「あんたはお子様ね。名波さんの葵を見る目は、愛おしさに溢れているわよ。今日一日お世話係りをしていた私はね、その様子を見ていたからわかるの。披露宴の間だって、常に葵のことを気にして見ていたわよ」
「そ、そお?」
久美は恋愛経験豊富だ。きっと葵では気が付かない細かいところを見ていてそう感じたのだろう。
少し葵は嬉しかった。お互いの気持ちが通じ合っていない今、些細なことが近づいている一歩だと感じられるからだ。



