控室から静々と歩き、仲人と合流する。仲人夫人からは、二人の並んだ姿に、ため息が漏れた。

手水でお清めをし、巫女に導かれて本殿へと向かう。赤い毛氈を進み回廊をあるくと、カメラのシャッター音に気が付いた。綿帽子の間から上目遣いに周りを見ると、神社を参拝していた人や、外国の観光客が日本の結婚式を写真に収めていた。

本殿に入ると、新郎側、新婦側にそれぞれ分かれて着座をする。神主が祝詞を読み上げ、二人のこれからを祈願する。

二人は、神前に立ち、仁が結婚の報告と夫婦の結びつきを誓う誓詞奏上を読み上げる。三三九度の盃を交わし、指輪の交換へと移る。

葵が仁に選んだ指輪。仁が葵に選んだ指輪がそれぞれにはめられる。仁が葵に指輪をはめようと差し出した手を取った時、かすかに葵の手は震えていた。





「大丈夫」





仁は、軽く葵の手を握り、葵の緊張をほぐす。仁は、葵の、紅葉のような小さな手の薬指に指輪をはめた。

次に、葵が仁の薬指に同じく指輪をはめて、拝礼、親族の固めの杯を交わして式は終わった。





「新郎新婦はこちらへ」





これから、葵と仁は写真撮影に入る。石畳の上で神殿をバックに撮る。ホテルのスタジオで記念写真は撮るが、神社でも、撮影することになっていたのだ。





「喉は乾いてない?」





仁が撮影に入る前に葵に聞いた。





「少し……」





少しではなかった。緊張から、喉がからからだったのだ。





「ちょっと待ってて」





仁は葵の傍を離れると、母、理恵に駆け寄り、ペットボトルを持ってきた。





「ストローを差すから、持っていてくれる?」





仁が理恵からもらって来たペットボトルを葵に持たせ、ストローを差した。





「はい」





仁は葵からペットボトルを受け取ると、口元に持って行き、飲ませた。





「ありがとう、名波……じゃなくて、仁さん」

「葵」





この時にお互いが初めて名前を呼びあった。彼女は名前を呼ばれると、照れたように俯く。

伏し目がちに葵を見つめる仁。それに微笑で返す葵。親族はその様子を温かく見守る。

撮影の準備が整い、カメラマンが二人を呼ぶ。

指定された位置に立ち、付添いさんが着物を直す。細かな肩の位置や、手の位置を直して、撮影は終わった。





「ふう」

「疲れたね。頭も重いだろう」

「ちょっと、首が痛いです」

「もう少しだ」

「はい」





何処までも葵に優しく気遣っている仁に、頑なな心に戻りつつあった葵の心は、ほぐされていった。