仁から連絡があり、葵の勤務するホテルの、従業員出口前に出てきた。すると、正面には既に仁が待っており、注目を浴びていた。





「目立つんだから、そこに立ってないでよ」





仁には、聞こえないように、葵は、文句を言う。人目を惹く目立つ容姿だと言うことを、仁本人は分かっていない。





「すみません、お待たせしました」

「いいや……俺も今来たところだから」





はたから見れば、初々しいしく映る二人だが、気まずさが、二人を包んでいる。葵は、少しせっかちな所がある。黙って先を言わない仁に、しびれを切らし始めた。





「食事でもどうかと思ったんだが、まだ早いだろうか?」





葵が、息を吸って、言葉を出そうとしたとき、仁が言った。





「あ、そうですね。早いと言えば早いし。どうします?」





葵は、袖を捲って、腕時計を見た。





「じゃあ、買い物でも行こう」

「買い物?」

「なんというか、ぶらぶらと……」

「いいですよ」





仁と、葵は、並んで歩き始めた。駅から近いプレシャスホテルは、地下鉄の出口からも直結していて、便利な立地にある。ただ歩くなら散歩になってしまうが、葵は、何も言わずに仁と並んで歩く。





「歩きなんですか?」





いつも車の仁が、歩いているために、聞いた。





「あ、そうだった。ホテルの地下に車を止めてあるんだった。ごめん、戻ろう」

「え……」

「悪い……」





仁のボケぶりに、笑うどころか、絶句してしまっている。

二人で、ホテルに戻る。仁は、バツが悪いのか、頭を掻いた。

地下駐車場に行くと、見覚えのある車が止まっていた。

仁が助手席のドアを開け、葵を乗せると、運転席に回り、乗り込む。





「どこか、行きたいところはある?」

「特には……」

「そっか」





葵も仁のことは言えない。デートなど久しぶりで、何処に出かけるのか、何をするのかも思いつかない。しかし、





「東京タワー……でも行きます? ここから近いですし」

「そうだね」





何とか、デートする場所を思いつき、葵は、ほっと息を吐く。なんで私が提案するのか。と内心思っているが、仁の天然な部分を垣間見て、許す気持ちも湧きあがる。東京タワーに向けて車を走らせているが、葵は、黙っていた。以前のことがあり、控えているのは、当然だ。決して気まずい雰囲気ではなかったが、話を切り出したのは、仁だった。