「葵ちゃん……食べっぷりと飲みっぷりがいいわ。気に入った」
「はい! ありがとうございます!」
仁に聞きたいことは山ほどあった。仁をもっと知りたいと話しかけようとしたけれど、何故か出来ないでいた。今、綾とこうして一緒にいるのだから、聞き出してしまおう。それくらいは許されるだろう。
仁の話をしようとしていたが、葵の興味は、綾に向いていた。久美に聞かされていたこともあり、綾を形作る物を知りたくなった。相槌を打ちながら、良い情報は、メモを取り、矢継ぎ早に質問をしている。大好きな酒にも目をくれず、ひたすらメモを取った。
「横文字ばかりで、覚えられません」
「サンプルがあるから、今度持ってくるわ。使ってみて」
「ありがとうございます!」
ドレスの打ち合わせをしていた時とは、真逆のうきうきした気持ちの葵は、憂鬱な気分もどこか吹き飛び、綾が、抜群に美味しいと言った茶わん蒸しを食べていた。その時、店の引き戸が大きな音をたてて、開いた。
「仁」
綾が呼ぶと、仁は、綾に答えることなく、直ぐに葵を見た。葵もまさか仁が来るとは思わず、びっくりした顔をして、椅子から降りて立った。仁は店の入り口の暖簾を、腰をかがめて通り、後ろで手戸を閉めた。
「遅くなった」
「ホントよ、遅すぎ」
綾に悪いと言い、仁は、葵の隣に向かう。
「お疲れさまでした」
葵は、上司に向かって挨拶するように、丁寧にお辞儀をした。
「えっと、久しぶり」
「お久しぶりです」
そんな挨拶に呆れた綾は、
「ちょっと、なんなの? いくら何でも他人行儀過ぎるでしょう?」
綾の言う通りだったが、二人は砕けて話すことが出来ない。座りなさいよと、綾に言われ、やっと二人は腰を下ろした。
「いつもので?」
空気を読みながら、大将が仁に聞く。
「ええ、お願いします」
タイミングを読み、おしぼりと、お茶を女将が持って来た。仁が、酒を飲めないことを知っているのだ。
「潤は?」
葵を挟んで綾が、仁に聞く。
葵は、邪魔にならないように配慮したのか、身体を少し仰け反った。
「帰った。デートだとか言ってた」
「そうなのね。相変わらず女癖が悪い感じ?」
カウンターに両肘をついて指を組むと、その上に顎を乗せて仁を見た。
「常に本気なんだと」
「口だけは達者なんだから」
葵は、のけぞったまま、二人の話を頷いて聞いていた。
「葵ちゃん、潤ってね、女が切れたことが無い男なの。その点、仁は、見かけは抜群でも、奥手だから心配ないわよ」
「そうなんですね」
綾に答えながら、葵は、仁を見た。仁も葵を見ていて、視線がぶつかる。かなりのいい男だと言うことは分かっていた葵だが、じっと見られることが恥ずかしく、つい視線を外してしまった。そんな二人を見ている綾は、微笑ましく見ていた。
腹が減っていたのか、仁は、大将が握る寿司を次から次へと平らげて行き、食事は終えていた葵は、感心して見ていた。大将は、仁の食べる量を把握している。好みも知っている為に、何も注文せずに握っていく。その様子は、敏感な葵は気が付いていた。綾が話題を作り、なんとか会話が弾んでいたが、綾のそろそろという一言で、店を出ることになった。
「はい! ありがとうございます!」
仁に聞きたいことは山ほどあった。仁をもっと知りたいと話しかけようとしたけれど、何故か出来ないでいた。今、綾とこうして一緒にいるのだから、聞き出してしまおう。それくらいは許されるだろう。
仁の話をしようとしていたが、葵の興味は、綾に向いていた。久美に聞かされていたこともあり、綾を形作る物を知りたくなった。相槌を打ちながら、良い情報は、メモを取り、矢継ぎ早に質問をしている。大好きな酒にも目をくれず、ひたすらメモを取った。
「横文字ばかりで、覚えられません」
「サンプルがあるから、今度持ってくるわ。使ってみて」
「ありがとうございます!」
ドレスの打ち合わせをしていた時とは、真逆のうきうきした気持ちの葵は、憂鬱な気分もどこか吹き飛び、綾が、抜群に美味しいと言った茶わん蒸しを食べていた。その時、店の引き戸が大きな音をたてて、開いた。
「仁」
綾が呼ぶと、仁は、綾に答えることなく、直ぐに葵を見た。葵もまさか仁が来るとは思わず、びっくりした顔をして、椅子から降りて立った。仁は店の入り口の暖簾を、腰をかがめて通り、後ろで手戸を閉めた。
「遅くなった」
「ホントよ、遅すぎ」
綾に悪いと言い、仁は、葵の隣に向かう。
「お疲れさまでした」
葵は、上司に向かって挨拶するように、丁寧にお辞儀をした。
「えっと、久しぶり」
「お久しぶりです」
そんな挨拶に呆れた綾は、
「ちょっと、なんなの? いくら何でも他人行儀過ぎるでしょう?」
綾の言う通りだったが、二人は砕けて話すことが出来ない。座りなさいよと、綾に言われ、やっと二人は腰を下ろした。
「いつもので?」
空気を読みながら、大将が仁に聞く。
「ええ、お願いします」
タイミングを読み、おしぼりと、お茶を女将が持って来た。仁が、酒を飲めないことを知っているのだ。
「潤は?」
葵を挟んで綾が、仁に聞く。
葵は、邪魔にならないように配慮したのか、身体を少し仰け反った。
「帰った。デートだとか言ってた」
「そうなのね。相変わらず女癖が悪い感じ?」
カウンターに両肘をついて指を組むと、その上に顎を乗せて仁を見た。
「常に本気なんだと」
「口だけは達者なんだから」
葵は、のけぞったまま、二人の話を頷いて聞いていた。
「葵ちゃん、潤ってね、女が切れたことが無い男なの。その点、仁は、見かけは抜群でも、奥手だから心配ないわよ」
「そうなんですね」
綾に答えながら、葵は、仁を見た。仁も葵を見ていて、視線がぶつかる。かなりのいい男だと言うことは分かっていた葵だが、じっと見られることが恥ずかしく、つい視線を外してしまった。そんな二人を見ている綾は、微笑ましく見ていた。
腹が減っていたのか、仁は、大将が握る寿司を次から次へと平らげて行き、食事は終えていた葵は、感心して見ていた。大将は、仁の食べる量を把握している。好みも知っている為に、何も注文せずに握っていく。その様子は、敏感な葵は気が付いていた。綾が話題を作り、なんとか会話が弾んでいたが、綾のそろそろという一言で、店を出ることになった。



