結納式は厳かに始まり、仲人が品目を読み上げ、それを頂戴する。うるさい弟達も借りてきた猫のように大人しい。仁は、何をするのスマートだ。まるで経験があるかのようだと、密かに葵は思っていた。自分の立場をわかったうえで、作法を学んだのかは知らないが、しみついた動作が美しい。葵は、つくづく自分とは不釣り合いだと、今さらながらに感じてしまっている。
そして、全てが滞りなく終わり、場を移して、会食となった。
お腹の減っていた弟達は、がつがつと食べ始め、恵美子に咳祓いをされても気が付かず、堪らず葵が頭を小突いた。
「痛ってえ、なんだよ姉ちゃん」
葵の隣に座っていた楓が頭を擦り文句を言う。名波家、仲人と一斉に楓を見る。それに焦った葵は、慌てて取り繕う。
「もっと、お上品に食べられないのかしら?」
「なんだよ、姉ちゃんだって家じゃこんなにおしとやかじゃないくせに」
余計なひと言を言ったのは翔だ。義孝、恵美子もソワソワする。
「う、うるさいわね」
その様子を見ていた、理恵が会話に入ってきた。
「いいわね、兄妹が仲良くて」
どこか懐かしむように、目を細めて楓、葵を見る。
「あ、あの、すみません。騒がしくて」
葵が頭を下げ続け、謝る。
「すみません、躾けがなっていなく……」
そこへ、恵美子がさらに頭を下げて謝った。横に並ぶ義孝も同時に頭を下げた。
「いえ! 勘違いなさらないで下さい。仁は姉がおりますが、既に結婚して、今は夫の仕事で海外に暮らしております。ですから、兄妹ケンカを久し振りに見て、やっぱりいいものだなと感じただけですの。当家だって、多少大きな会社を経営しているだけで、私の出身はただのサラリーマン家庭。別に気取る程のことは何もありませんの」
大きく手を振って、ケラケラと笑う仁の母、理恵は気さくな女だ。60という歳になっていたが、年相応には全く見えず、スマートな体形と、彫の深い顔立ちが、仁と似ている。上品さも兼ね備え、申し分ない。
「そうですよ、私の父が経営していた小さな商店を私が大きくしたまで、ただの成り上がりです」
それを言ったのは、父の克典だ。理恵とは正反対に、恰幅のいい体形にダブルのスーツが似合っている。上質な生地で仕立てられたスーツは、体形にぴったりだ。
葵は、お見合いの時も余計な事はしゃべらなかった仁の両親が、どういう人達なのかその場では感じることが出来なかったが、葵の表情が和らぎ、安心していることがわかる。
「ありがとうございます。葵は……娘は家族思いのいい娘です。おっちょこちょいな面も、気が強く意志を通す面もありますが、自慢の娘です。どうぞ可愛がってやって下さい」
義孝は、胸の奥にはまだ、自分の借金の為に葵が名波と結婚すると思っている。義孝は土下座をして頭を下げた。
「お父さん」
娘の幸せの為ならば、親は何でもできるのだ。頭を下げる義孝を見て、葵は泣きそうな顔をしていた。そんな葵を仁は見つめる。
「どうか、頭を御上げ下さい。我が家も、この愛想なしの、でくのぼうを引き取ってもらって感謝しているんです。葵さん、仁は仕事が忙しくて、寂しい思いをさせるかもしれません。こいつが何かしでかしたら、直ぐに私の所にいらっしゃい。シメてやりますからね」
「母さん」
腕まくりをしてみせた理恵に、面子を潰されたような形になった仁をみんなで笑い、和やかな結納は終わった。
そして、全てが滞りなく終わり、場を移して、会食となった。
お腹の減っていた弟達は、がつがつと食べ始め、恵美子に咳祓いをされても気が付かず、堪らず葵が頭を小突いた。
「痛ってえ、なんだよ姉ちゃん」
葵の隣に座っていた楓が頭を擦り文句を言う。名波家、仲人と一斉に楓を見る。それに焦った葵は、慌てて取り繕う。
「もっと、お上品に食べられないのかしら?」
「なんだよ、姉ちゃんだって家じゃこんなにおしとやかじゃないくせに」
余計なひと言を言ったのは翔だ。義孝、恵美子もソワソワする。
「う、うるさいわね」
その様子を見ていた、理恵が会話に入ってきた。
「いいわね、兄妹が仲良くて」
どこか懐かしむように、目を細めて楓、葵を見る。
「あ、あの、すみません。騒がしくて」
葵が頭を下げ続け、謝る。
「すみません、躾けがなっていなく……」
そこへ、恵美子がさらに頭を下げて謝った。横に並ぶ義孝も同時に頭を下げた。
「いえ! 勘違いなさらないで下さい。仁は姉がおりますが、既に結婚して、今は夫の仕事で海外に暮らしております。ですから、兄妹ケンカを久し振りに見て、やっぱりいいものだなと感じただけですの。当家だって、多少大きな会社を経営しているだけで、私の出身はただのサラリーマン家庭。別に気取る程のことは何もありませんの」
大きく手を振って、ケラケラと笑う仁の母、理恵は気さくな女だ。60という歳になっていたが、年相応には全く見えず、スマートな体形と、彫の深い顔立ちが、仁と似ている。上品さも兼ね備え、申し分ない。
「そうですよ、私の父が経営していた小さな商店を私が大きくしたまで、ただの成り上がりです」
それを言ったのは、父の克典だ。理恵とは正反対に、恰幅のいい体形にダブルのスーツが似合っている。上質な生地で仕立てられたスーツは、体形にぴったりだ。
葵は、お見合いの時も余計な事はしゃべらなかった仁の両親が、どういう人達なのかその場では感じることが出来なかったが、葵の表情が和らぎ、安心していることがわかる。
「ありがとうございます。葵は……娘は家族思いのいい娘です。おっちょこちょいな面も、気が強く意志を通す面もありますが、自慢の娘です。どうぞ可愛がってやって下さい」
義孝は、胸の奥にはまだ、自分の借金の為に葵が名波と結婚すると思っている。義孝は土下座をして頭を下げた。
「お父さん」
娘の幸せの為ならば、親は何でもできるのだ。頭を下げる義孝を見て、葵は泣きそうな顔をしていた。そんな葵を仁は見つめる。
「どうか、頭を御上げ下さい。我が家も、この愛想なしの、でくのぼうを引き取ってもらって感謝しているんです。葵さん、仁は仕事が忙しくて、寂しい思いをさせるかもしれません。こいつが何かしでかしたら、直ぐに私の所にいらっしゃい。シメてやりますからね」
「母さん」
腕まくりをしてみせた理恵に、面子を潰されたような形になった仁をみんなで笑い、和やかな結納は終わった。



