大安吉日。おめでたい日にはもってこいの晴れ。外の駐車場には団地にそぐわないリムジンが一台。名波家が寄越した車だ。

 立花家は一家でお見合いをした料亭に向かう支度をしていた。双子の弟達は成人式に着たスーツ。母、恵美子と父、義孝はスーツを着ていた。





 「皆、支度は出来たか? 出発するぞ」

 「俺達はもういつでも出られるよ」





 双子は洗面所の鏡を取り合いしつつ、準備は出来ていたようだ。





 「葵、大丈夫か?」





 義孝はベランダから外を眺めていた葵に、背後から心配そうな声で話しかけた。





 「うん。行こうか」



振り向いた葵は、義孝に満面の笑顔を見せる。決心したような笑顔に、義孝は無理やり笑って返した。

 立花一家は騒がしく家を出た。

 外に出て、迎えのリムジンに乗り込むと、はしゃいだのは弟達だ。初めて乗る高級外車に興奮気味だ。恵美子はそれを制止した。





 「子供じゃあるまいし、静かにしなさい。恥ずかしいったら、もう」

 「ごめん、ごめん」





 義孝は昨日の夜まで、結婚は断ってもいいんだぞと、葵に言っていた。自分のことは気にするなと。その言葉に揺れ動いたのは嘘ではない。でも、葵は弟達の笑顔を見て、これで良かったのだと、再度言い聞かせた。自己犠牲だとは全く思っていない。

はしゃぐ弟達を見ながら、葵は仁の事を考えていた。名波グループの副社長でありながら、偉ぶった態度を葵には見せない。仕事とプライベートは分けているのだろうが、葵の前では穏やかな人だ。口数が少なく、何を考えているか感情が読み取れないところがあるが、大丈夫、うまくやっていける、好きにもなれる、と後戻りできない現状に向き合っていた。