「いらっしゃいませ」
落ち着いた声で接客する女性店員の前で、仁は、
「婚約指輪と、結婚指輪を」
迷わず言った。
「畏まりました」
店員がいなくなると、葵はすかさず、仁に話しかける。
「名波さん」
「自分で選んで贈ろうと思ったんだが、どうしても選べなくて。一緒に選んでくれると嬉しい」
「ここは……」
高すぎて困ると、言うところで、店員がセレクトした指輪が目の前に出された。
「お待たせいたしました。人気のデザイン、ご予算などをお選び致しました」
ずらりと並んだ指輪は、なんとも言えない輝きで、葵は釘付けになった。しかし、肝心の値段がわからない。値札を捲ってもいいものか、見ないで選ぶのが、こういう宝飾店のマナーなのかと、頭の中で考えがぐるぐると回る。それを察した仁は、
「好みはどんな感じだろうか?」
「えっと……」
ここで、いらないと言えば、仁に恥をかかせてしまうと、葵は、並べられた指輪を見た。
正直、大きな石やデザインが複雑な物は好みではない。
少し横に視線をやり、ショーケースを見る。すると、店員がそれを察知して、さっと並べた指輪をどかす。
「他のがいい?」
「いいえ、きれいで、他のも見たくなったんです」
それを聞いた仁が、顔で店員に合図をして、店員は指輪をもとの位置に戻し始めた。
「好きなデザインを選んで」
素直に頷けない。それは、女ならだれでも憧れるハイジュエリーブランドで、想像のつく限り、一般人は到底買えない金額のジュエリーであるからだ。葵は、仁のプライドと、自分の価値観の狭間で苦しむ。
選べない葵の気持ちを察したのか、店員が話しかける。
「お客様は、指が細く、小さな手でいらっしゃいますので、このようなデザインがお似合いかと思います」
そう言って、小ぶりなダイヤモンドがトップにつき、リング周りにもダイヤモンドが施されたデザインの指輪をケースから取り出した。
「きれい」
おもわず言葉が出てしまうほど、輝きがすごい。店員が葵の指にそれをはめ、じっとみる。
「似合ってる」
仁に言われ、葵も思わず笑みがこぼれる。
緊張がほどけたのか、葵は、指にはめたまま、他の指輪を見るために移動する。シンプルな物が好みの葵だが、ダイヤモンドの輝きの前では、それもなくなる。
何種類か試して、なんとか値札を見ることに成功する。表には出さないように必死に表情を取り繕ったが、その金額の高さに、怖くなる。そっと、指輪を外す。
「名波さん」
葵の困った顔を悟って、仁は、店員に外してくれるように言う。
「どうした?」
「私、此処じゃなくていいです」
「言いたいことはなんとなくわかる。でも、なんて言っていいか……俺の気持ちだから、好きなデザインで、君がずっと身に付けてくれると嬉しい」
「……」
葵は何も言い返すことが出来なかった。仁の気持ちを受け取らないと、悪いような気がしたからだ。
葵は、素直に頷き、じっくりと選び始めた。せっかくの申し出を邪見には出来ない。きちんと好きな物を選ぶのが礼儀なような気がした。
婚約指輪、結婚指輪を迷いつつも選び、どっと疲れが出た。
店側がVIPだと感じたのか、仁と葵の二人は、VIPルームに通された。
落ち着いた声で接客する女性店員の前で、仁は、
「婚約指輪と、結婚指輪を」
迷わず言った。
「畏まりました」
店員がいなくなると、葵はすかさず、仁に話しかける。
「名波さん」
「自分で選んで贈ろうと思ったんだが、どうしても選べなくて。一緒に選んでくれると嬉しい」
「ここは……」
高すぎて困ると、言うところで、店員がセレクトした指輪が目の前に出された。
「お待たせいたしました。人気のデザイン、ご予算などをお選び致しました」
ずらりと並んだ指輪は、なんとも言えない輝きで、葵は釘付けになった。しかし、肝心の値段がわからない。値札を捲ってもいいものか、見ないで選ぶのが、こういう宝飾店のマナーなのかと、頭の中で考えがぐるぐると回る。それを察した仁は、
「好みはどんな感じだろうか?」
「えっと……」
ここで、いらないと言えば、仁に恥をかかせてしまうと、葵は、並べられた指輪を見た。
正直、大きな石やデザインが複雑な物は好みではない。
少し横に視線をやり、ショーケースを見る。すると、店員がそれを察知して、さっと並べた指輪をどかす。
「他のがいい?」
「いいえ、きれいで、他のも見たくなったんです」
それを聞いた仁が、顔で店員に合図をして、店員は指輪をもとの位置に戻し始めた。
「好きなデザインを選んで」
素直に頷けない。それは、女ならだれでも憧れるハイジュエリーブランドで、想像のつく限り、一般人は到底買えない金額のジュエリーであるからだ。葵は、仁のプライドと、自分の価値観の狭間で苦しむ。
選べない葵の気持ちを察したのか、店員が話しかける。
「お客様は、指が細く、小さな手でいらっしゃいますので、このようなデザインがお似合いかと思います」
そう言って、小ぶりなダイヤモンドがトップにつき、リング周りにもダイヤモンドが施されたデザインの指輪をケースから取り出した。
「きれい」
おもわず言葉が出てしまうほど、輝きがすごい。店員が葵の指にそれをはめ、じっとみる。
「似合ってる」
仁に言われ、葵も思わず笑みがこぼれる。
緊張がほどけたのか、葵は、指にはめたまま、他の指輪を見るために移動する。シンプルな物が好みの葵だが、ダイヤモンドの輝きの前では、それもなくなる。
何種類か試して、なんとか値札を見ることに成功する。表には出さないように必死に表情を取り繕ったが、その金額の高さに、怖くなる。そっと、指輪を外す。
「名波さん」
葵の困った顔を悟って、仁は、店員に外してくれるように言う。
「どうした?」
「私、此処じゃなくていいです」
「言いたいことはなんとなくわかる。でも、なんて言っていいか……俺の気持ちだから、好きなデザインで、君がずっと身に付けてくれると嬉しい」
「……」
葵は何も言い返すことが出来なかった。仁の気持ちを受け取らないと、悪いような気がしたからだ。
葵は、素直に頷き、じっくりと選び始めた。せっかくの申し出を邪見には出来ない。きちんと好きな物を選ぶのが礼儀なような気がした。
婚約指輪、結婚指輪を迷いつつも選び、どっと疲れが出た。
店側がVIPだと感じたのか、仁と葵の二人は、VIPルームに通された。



