「……言います。仕事を兼ねてでしたが、葵とパリを旅行する予定でした」
「ああ、知っている。とても楽しみにしていた」
パリに行く旅支度を葵に手伝って貰っていた時の、楽しそうな顔が忘れられない。
葵と過ごす日を楽しみに、どこへ行こうかと計画を立てていた。
「葵がパリにくる日、私は、仕事を早く切り上げ、葵にプレゼントをしたくて、買い物をしていました。その時、昔に付き合った女性と再会したんです。彼女はパリでデザインの勉強をしているとのことでした。葵の好きな物、似合う物が分からず、目につくものを買いあさっていたので、アドバイスをお願いしたんです。そして、お礼に食事をごちそうして、帰ろうとした時、一杯付き合わないかと誘われ、飲みました。葵の話しを聞いてくれ、飲めない酒がどんどん入っていきました。……そして気がついたら、部屋の寝室で寝ていて、隣にはその……」
仁は、その先が言えず、がっくりとうなだれる。
「それを、葵が見たんだな」
義孝の言葉を受け、仁は力強い視線で義孝を見る。
「何もしていません、誓ってしていません。俺は焦りました。秘書に電話をして、懸命に葵を探しましたが、見つからず、そのまま葵は帰国したんです」
ズボンの生地をギュッと握った。あの時の自分の不甲斐なさを思い出す。
「それで?」
「仕事も終わり、帰国してからは説明しました。納得はしていないようでしたが、分かってくれました。それが、また彼女が日本に仕事で帰国をしたのですが、仕事先が、葵のホテルだったんです」
「女将、おかわり」
仁の話しの間中、義孝はずっと飲み、一杯目は空になった。グラスを女将に向けてあげ、おかわりの合図を送る。
「どうしてそうなったのか、いまだに不明なんですが、彼女が、ありもしない話しを作り上げ、葵に話をしたんです」
「ありもしない話しとは?」
義孝は、首を捻る。
「私と、葵の結婚は自分との中をマスコミに知られないためのカモフラージュだと、時期を見て、終止符を打たせるつもりだったと」
「なんてことを……」
穏やかに話を聞いていた義孝は、さすがに怒りの面持ちである。自分の娘が傷つけられたのだ、いい気分じゃない。
「きれいに別れました。彼女から別れを切り出し、きれいに別れたのに何故……」
「それは女の嫉妬だよ」
「嫉妬?」
「こんな大企業を動かしている仁さんが、こと、女はダメなんだな」
「す、すみません」
仁は頭をぺこぺこして謝る。
「女は厄介な生き物だな? 仁さん。自分にしてくれなかったことを、葵にはしている。それが気に入らなかったのだろう。まあ、それも憶測だがな。それを、話し合いもせず、一方的に離婚を切り出した葵も悪い。だが、それくらいのことを信じさせてやれなかった仁さんも悪い。お互いに理解と思いやりが足りなかった結果だ」
「いや、全面的に私が悪いです」
「一番悪いのは私だ……会社の経営に失敗し、借金を作った。葵はバイトをしてまで家族を支えてくれた。見合いの後、借金の為に結婚をしたのだろうと感じてはいたが、止めさせることが出来なかった。仁さん、葵は沖縄にいる。沖縄のリゾートホテルで働いているよ。元気にしている。始めは泣いてばかりで帰りたいと電話をしてきたが、今は笑ってるよ。楽しそうに」
「沖縄!? 沖縄にいるんですか? お義父さん、教えてくれたという事は、その……」
「行って、話してきてはどうだ。葵には幸せになって貰いたい。くっ付くも離れるも君たち次第だが、……早く孫の顔を見せてくれ」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
仁は正座をして、手を付き、頭を下げた。
「ああ、知っている。とても楽しみにしていた」
パリに行く旅支度を葵に手伝って貰っていた時の、楽しそうな顔が忘れられない。
葵と過ごす日を楽しみに、どこへ行こうかと計画を立てていた。
「葵がパリにくる日、私は、仕事を早く切り上げ、葵にプレゼントをしたくて、買い物をしていました。その時、昔に付き合った女性と再会したんです。彼女はパリでデザインの勉強をしているとのことでした。葵の好きな物、似合う物が分からず、目につくものを買いあさっていたので、アドバイスをお願いしたんです。そして、お礼に食事をごちそうして、帰ろうとした時、一杯付き合わないかと誘われ、飲みました。葵の話しを聞いてくれ、飲めない酒がどんどん入っていきました。……そして気がついたら、部屋の寝室で寝ていて、隣にはその……」
仁は、その先が言えず、がっくりとうなだれる。
「それを、葵が見たんだな」
義孝の言葉を受け、仁は力強い視線で義孝を見る。
「何もしていません、誓ってしていません。俺は焦りました。秘書に電話をして、懸命に葵を探しましたが、見つからず、そのまま葵は帰国したんです」
ズボンの生地をギュッと握った。あの時の自分の不甲斐なさを思い出す。
「それで?」
「仕事も終わり、帰国してからは説明しました。納得はしていないようでしたが、分かってくれました。それが、また彼女が日本に仕事で帰国をしたのですが、仕事先が、葵のホテルだったんです」
「女将、おかわり」
仁の話しの間中、義孝はずっと飲み、一杯目は空になった。グラスを女将に向けてあげ、おかわりの合図を送る。
「どうしてそうなったのか、いまだに不明なんですが、彼女が、ありもしない話しを作り上げ、葵に話をしたんです」
「ありもしない話しとは?」
義孝は、首を捻る。
「私と、葵の結婚は自分との中をマスコミに知られないためのカモフラージュだと、時期を見て、終止符を打たせるつもりだったと」
「なんてことを……」
穏やかに話を聞いていた義孝は、さすがに怒りの面持ちである。自分の娘が傷つけられたのだ、いい気分じゃない。
「きれいに別れました。彼女から別れを切り出し、きれいに別れたのに何故……」
「それは女の嫉妬だよ」
「嫉妬?」
「こんな大企業を動かしている仁さんが、こと、女はダメなんだな」
「す、すみません」
仁は頭をぺこぺこして謝る。
「女は厄介な生き物だな? 仁さん。自分にしてくれなかったことを、葵にはしている。それが気に入らなかったのだろう。まあ、それも憶測だがな。それを、話し合いもせず、一方的に離婚を切り出した葵も悪い。だが、それくらいのことを信じさせてやれなかった仁さんも悪い。お互いに理解と思いやりが足りなかった結果だ」
「いや、全面的に私が悪いです」
「一番悪いのは私だ……会社の経営に失敗し、借金を作った。葵はバイトをしてまで家族を支えてくれた。見合いの後、借金の為に結婚をしたのだろうと感じてはいたが、止めさせることが出来なかった。仁さん、葵は沖縄にいる。沖縄のリゾートホテルで働いているよ。元気にしている。始めは泣いてばかりで帰りたいと電話をしてきたが、今は笑ってるよ。楽しそうに」
「沖縄!? 沖縄にいるんですか? お義父さん、教えてくれたという事は、その……」
「行って、話してきてはどうだ。葵には幸せになって貰いたい。くっ付くも離れるも君たち次第だが、……早く孫の顔を見せてくれ」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
仁は正座をして、手を付き、頭を下げた。



