眠れない夜には



『ねぇなんで…
お兄ちゃん死んでないよ…』

もう、いやだ、
信じたくないんだ。


『なんで…っ』







「死んだからだろ。辰也が。」






後ろから聞こえた


落ち着いた、声だった。



振り返れば、お兄ちゃんと同じぐらいの
歳の人だった。

赤っぽい髪色に、黒くまっすぐな目…

たぶんどこかで何度か見た顔なんだろうけど、今の私には、思い出せない。


『誰だか知りませんけど…
お兄ちゃんは…
死んでなんか…ないです、から…』


逃げ続ける私の言葉の語尾は…
消えかけていた。



「じゃああそこに写ってるのは
誰だよ? あの棺の中で眠ってんのは誰だよ?」


『もうやめて!!!!!!!!!!』


周りの人も驚いたとおもう。
だってさっきまで涙も流してなかった私が
泣き叫んだから。


「奏汰くん、もう…」

おばさんが止めるなか、
奏汰という人は言葉を続けた。





「そうやって現実から逃げる
妹なんて、辰也が聞いたらどう思うだろうな」




『え…』