【短編】穴



「美味しい〜!」


お世辞抜きに、本当に美味しかった。


炊きたてのご飯とおかずを前にして、箸が止まらない。

うちの朝ご飯は、いつもパンとフルーツとヨーグルト。

和食なんて、なんだか新鮮。

目の前に座ったおばあちゃんは嬉しそうに、「たくさんお代わりしてね」と、微笑む。 


おじいちゃんも満足そうに笑っている。 


「いつもは爺さんと婆さん二人だけだから、こうして皆で食べると、飯が美味いなぁ! 


皺だらけの顔を、さらに皺くちゃにさせたおじいちゃんが嬉しそうに話す。


「おじいちゃんち、こんなに広いもんね。誰も住んでいないあっちの家、もったいないね」 


「そうか。じゃあ、美奈が住んでもいいんだぞ!」


「えっ?一人ではちょっと……」


「そうそう!コイツには無理!」


振り返ると、いつのまに降りてきたのか、お兄ちゃんが障子の前に立っていた。 


「ふ〜んだ!お兄ちゃんだって、怖がりのくせして!」 


「バ〜カ!おまえよりマシだよ!」


朝っぱらから、兄弟喧嘩が始まった。