【短編】穴



どこへ逃げたらいいのだろう。 


怖い。怖いよ。


助けて。誰か助けて。


手を繋いだまま、私たちは庭を縦横無尽に走り抜けた。 


途中、植木に隠れてみたけど、見つかりそうになって、また二人で走りだした。 


「お兄ちゃん…」


「しっ!」


黙れと言わんばかりに、きつく手を握り、お兄ちゃんは私の腕を強く引っ張った。


逃げた。ひたすら逃げ回った。 


額を流れる汗を拭うこともせず、昼間、探険した道を辿った。 


「待てー、この糞ガキ!」

ハァハァ息を切らしながら後ろを振り返れずにいた。 

とにかく、逃げなきゃ! 

サワガニのいた、あの水流を裸足で駆け上がる。 


「…あっ!お兄ちゃん!!」


頭をコクンと垂れたお兄ちゃんも私と同じことを考えたようだ。


追ってくる足音が、すぐ近くまで聞こえてくる。