【短編】穴

カーテンがふわりふわりと揺れながら、心地よい風を運ぶ。


私もそれに釣られ、ベランダへ飛び出した。


高台に建つこの母屋の二階からは周辺の民家の明かりがポツポツと見える。


見上げると、夜空には無数の星がちりばめられている。

都会じゃ、目にできない星の輝きだった。


ベランダの手摺りに掴まり、私はしばらくの間、吸い込まれそうな漆黒の空を眺めた。



「…痒いっ!」


突然、発せられた方を向くと、腕や足をバチバチ叩いて蚊と奮闘しているお兄ちゃんの姿があった。 


「刺されたの?」


「あぁ。俺の血は、美味いらしいよ!」


テレビの上で蚊取り線香が焚かれていたけれど、網戸を開けた拍子に入ってきたのだろう。 


飛び回る蚊を相手にムキになるお兄ちゃんが、なんだか可愛らしかった。